人物

前皇帝（ファラオ）。1,570.3.27-1,602.10

1,589.1.29生, 40歳(見掛け20歳). 身長158cm 体重51kg.

現皇帝（ファラオ）

ストレートの濃いグレーの髪を長く伸ばす。頑強には見えないがその肉体は戦士として確かなものである。瞳は普段は黒いが、感情がこもると赤く見える。通常は左の肩からかかった黄色い長衣をまとって頭には何もつけないが、儀式においては上半身は裸で首回りに装飾品の帯を着け、特別な腰布を巻く。頭にも特別な冠を載せる。そして古代ミラルト王朝のファラオが持っていたとされる太古の大鎌を手にする（これは儀式のための魔法しか掛かっておらず、戦闘向けではない。戦陣に立つときは片手剣を持つ）。

先代フレオニス・レオフリックの子供五人兄弟の三男として生まれた彼は、当初はファラオ候補ではなかった。身体もそれほど強くなかった。しかし二人の兄はアイアイア熱と見られる症状で行方不明となり、後に死体で発見された。このため、三男のグランバートが皇太子となった。1,602年に父フレオニスが死去し（32歳だった）、グランバートは13歳で戴冠することになった。以来27年に渡ってファラオの地位にある。

ファラオとなった彼が取り組んだのは、対クルート戦争の終結である。1,548年のマスキス王国侵攻から漫然と続いていた戦争状態を、グランバートは終わらせることを決意した。そのための初手が、南の沿岸地帯にあったシェリンヒ王国を吸収することだった。1,606年のミュンケル要塞戦の損耗が大きかったことと、南東エネス方面に再度クルートが侵攻したことで中断したが、1,618年に首都テオディヒシュタットを陥落させて滅亡に追い込んだ。国王だったグードセンには旧領全土に加えて西側エネス方面を加えた広大な領土を与え、シェリンヒ侯爵とした。寝返ってクルートに走る未来もあり得る危険な賭けだったため、同時に彼の妻子をミラードに留め置いた。

1,625年のクルート侵攻に際し、グードセンは一貫して帝国軍として戦い、そして戦死した。息子アイスバードが首都から前線へ派遣されてその後を継いだが、彼は父以上にグランバートに対して忠誠を誓って最前線で戦っている。しかし、戦いはグランバートの思惑通りには進まず、戦争は膠着状態に陥った。1,629年、国際会議による調停が行われた。双方は軍を引き、その後国際会議からの要請を受けたグランバートはライトネア連合王国首都ディルゴへ赴き、クルート連邦のハンス・ミュラー・ヘンドリクス総評議長と会見した。以来、両国の支配者が顔を合わせるのは初めてだった。

相手を一目見るなり、戦争の継続はクルートのみならず自国ミラードにも破滅をもたらすとグランバートは悟った。それほど両者の力は拮抗し、かつその意思は強かった。グランバートが考えたことは、ヘンドリクスと同じことだった。戦争を完全に終結し、相互に人員を派遣し合って復興に努めることだった。話はそれだけに留まらなかった。両国はライトネアの提案に従ってNoSTOへの加盟も、この会議で決定した。

なお、ミラードにおいて黄色は太陽を表し、ファラオのみが着用を許される色である。

皇弟

皇弟

1,600.5.26生, 29歳(見掛け同じ). 身長143cm 体重40kg.

ミラード帝国に住む暗殺者

どこにでもいるごく普通の少女に見える。実際にはメイクで年齢を大きく変えて見せることができるが、好んでいるのは15歳程度の姿である。黒髪をポニーテールにして背中まで垂らしている。瞳は紅色。白のYシャツ状のもの、黒いズボンを履いていることが多い。またシャツの上にはカーディガンが多く、薄緑色のものを好んで着ている。赤フチの眼鏡を掛けている。恥ずかしがりであがり症、大したことでなくても赤面している。初対面の人物とはまともな会話もできない。良く転んで半ベソをかいたりしている。

しかし、この性格はすべて周囲の者たちを欺くための演技であり、実体は毒に特化した暗殺者。これまで10年ほどの活動で仕損じたことはわずか数回という凄腕である。

基本的には様々な毒を相手の飲食物に混ぜたり持ち物に塗布したりするが、自分の体を使うことも多い。手のひら等一部、あるいは全身に塗布して相手に接触したり、口に含んで口移ししたりする。毒は購入することもあれば自力で採取、精製することもある。

自身を含むモータルが作り出すあらゆる毒（自然物であれ、魔法であれ）に絶対的な耐性がある。毒素が体内に取り込まれても強力な分泌物のためにほんの数秒で分解してしまい、催眠や麻痺、幻覚程度であれば影響が出る前に無力化してしまう。象を数秒で殺すほどの致死毒を飲み干してさえ、気分が悪くなる程度で大きく行動を妨げられることはない。この体質は逆に通常の薬品類にも影響し、治癒効果を打ち消してしまう。高位の神官による強力な治療術のみ受け付けるが、それでも十分な効果を得られない。そのため自身が傷を負わないことを最優先に考える。

生まれはエルドレス神国の首都エカトリノである。ただし4歳のときにブランジ島のレヴィアンに移住しているため、その頃の記憶はない。1,613年のアイスラント侵攻時に両親とともに脱出、西へ逃れた。デュール内海を渡ろうとラグランテの波止場に至ったとき、父親は荒くれ者の船乗りたちと諍いを起こして殺されてしまった。母親は彼らの慰み者になり、カナは雑用係としてこき使われるようになった。

数日後、船乗りの一人が酔って甲板で作業をこなすカナに襲い掛かった。船乗りはカナに馬乗りになって笑いながらカナの衣服を剥ぎ取ろうとしたが、カナが偶然手にとった布で顔を叩かれ、数秒で泡を吹いて倒れた。それを見た船乗りが二人、逆上してカナに襲いかかったが、同じように布が身体に触れて倒れたため、他の男たちは恐れを為して近づかなくなった。

布には猛毒が染みこませてあったのである。しかし、カナはなぜ彼らが倒れたのかを理解していなかった。足を引きずりながら母親の元へたどり着いた後、その毒の布は母親の命をも奪うことになった。泡を吹いて倒れ、動かなくなってしまった母親を前に一頻り叫んだ後、カナはクスクスと笑い、次いで何事もなかったかのように振る舞うようになった。ただし、船乗りと母の命を奪った毒の布を手放すことはなかった。それは元々船の積み荷のひとつだったが、甲板にあった理由、カナの手の届くところにあった理由は不明である。

船は内海の西岸、現在のデイトナ連合州のひとつクラーゼにたどり着き、カナは船を降りた。街で出会った巡礼者の一行に紛れ込み、ソガル森で分かれて西進、イングヴィン山脈に至った。脚にはそれなりに自信もあったが、まだ13歳である。さすがにこの急峻な連山を徒歩で越えることはできず、途中で力尽きて倒れてしまった。すると彼女の前にボロをまとったふてぶてしい顔の中年の男が現れた。男が何事か呟くとカナの身体の疲労が一気に消失した。その上で男は、船の上で何が起こったか、なぜカナ自身が無事なのかを教えてくれた。さらに、ミラードかクルートに行けば悲しい出来事を忘れて人並みの生活も可能であると言い、どこからか一頭の駿馬を召喚した。馬にはたっぷり一週間分の食糧も積み込まれていた。しかし、カナは礼を口にはしたものの、でも、自分にはもう何もないとだけ言って馬にまたがり、男と別れた。

駿馬の力を借りて山を下りエネスの街に到着したカナは、街の盗賊ギルドへ行って自身を売り込むことにした。長を始めとした男たちは当初こそカナを馬鹿にしたが、実際に駆け出しの団員が一人即死するのを見て態度を改めた。代わりに彼らはカナを一流の暗殺者にすることにした。一部の上流階級ともつながりのある彼らにとって、カナが少女であるという点は大きなセールスポイントになったからである。

ただし、ギルドでの修行にも関わらず武器は全般的に上達しなかった。致死毒に漬け込んだダガーを数本所持してはいるが、相手がよほど油断していなけばあまり役に立たない。

ギルドでの仕事をこなすうちに伝え聞いた一匹狼の同業者グレイシルヴァーを一方的に敵視するようになっている。ただ、グレイシルヴァーは用心深い上に勘も鋭い。さらに剣腕では比較にならないため、必勝の策略を組み立てられるまで直接相対することは避けている。

皇女

クルート連邦ファセラスの子ジュストリンの妃。

皇女

皇子

1,607.9.13生, 22歳.

クルート連邦ファセラスの子イステニアを妃とする。

皇子

1,621.5.29生, 8歳.

1,629年、ミラード・クルート戦争の終結と同時に、両国の間で平和の象徴として相互結婚が行われた。これによって、グランバート皇帝の長女のディアナが、クルート連邦ヘンドリクス（ファセラス）の息子で次期総評議長であるジュストリンの后となった。