画：長次郎様
1,577.5.2生, 52歳(見掛け同じ). 身長159cm 体重49kg.
国王
濃い金の波打つ長髪、深い緑の瞳。色白で痩身の戦士。濃い色の柄もののヘアバンドを付けて、額に前髪が触れないようにしていることが多い。服装は軽装が多く、戦闘時でも金属鎧ではなく革鎧を用いる。自ら戦うことは少なく、部下を有効に活用した戦い方をする。
とくに目立った容貌を持つわけではないが、微笑みを絶やさぬその表情と全身から発するオーラは人を十分に惹きつけ、鼓舞させる。彼の言葉は魔法のように人を動かす。
グリミディスのごく一般的な両親の元に生まれた。当初は一族の中で特段目立つ存在でもなかった。それは戦士の一族において、体力の無さが蔑みの対象であり、自分に自信を持つことができなかったからである。
1,618年、41歳のときである。ある部族間の戦いの折、彼は小競り合いで打たれ、必死に逃げた。お荷物の彼には妻子も無く、斬られても嘆いてくれるのは母親くらいのものだったが、それでも命は惜しかった。あっさりと息が上がり、二人の追手が背後に迫った。彼の腕ではどうにもならなかった。そのとき、ある魔術師が前を通り掛かった。シドは驚いて草むらに転んでしまった。それを見た魔術師は、腕の一振りで追手を彼方まで吹き飛ばしてしまった。
相手が知識にあふれる人物だとわかると、シドは弟子入りを志願したが、魔術師は自分はたまたまこの地を訪れているだけだと言った後、「お前に魔術の才能はないし、たとえあったとしても儂は弟子を取っておらぬ」と言った。その宣告は、この世には何の希望もないように感じられた。シドはひどく落胆した。しかし、それを見た魔術師は続けて言った。「お前の才は、人を惹き付けることだ。人を集め、長所を褒めてやる気にさせろ。何があっても笑え。お前には力がある」。
シドは、これまでにも友人を褒め称え、上手く行ったことが何度かあったことに思い至った。その時自分は笑っていたと思う。羨望がないわけではないが、相手を素直に称賛したのだ。そしてシドが褒めた相手は、普段以上にうまくやっていた気がした。
シドは言った。「それでは、この世の叡智を知る持つお方。その大いなる力をしばらく私に貸して下さい」。そして微笑んだ。魔術師は「いいだろう」と言ってシドの仲間になった。これが現在も魔術監督官として仕えているベーグ・アルパインとの出会いである。彼はこの戦いをベーグの力で乗り切り、功績を認められて部族長から認められた。彼が強い魔法使いを従えているという事実は、他の戦士たちに「シドに味方するほうが得だ」と思わせるに十分だった。
シドは仲間たちを毎日のように称賛し、素直に感謝を口にした。またたく間に100人を超える戦士を従える立場になった。これは部族長にとっては面白くなかったが、シドの仲間たち（シドは決して彼らを手下のようには扱わなかった）は平時でも他の者たちより良い働きをするので、何も言えぬままに時期を逸してしまった。即ち、シドを1兵士として扱うために働きかける時期を。シドが彼に部族長の交替を願い出てきたとき、彼の周りには既に味方はほとんどいなかった。1,620年、シドは部族長となった後、自らを王と宣言した。
シドはベーグや戦士、それに密偵らを加えた強固な軍団をもって周辺へ派兵し、次々と街をその支配下に収めていった。とくに1,624年に東のアガットを根拠地とする有力な豪族グレスターを傘下に収めた（形式上はそれまで同様、友人関係であり同盟関係）ことは非常に大きい。南のアズモフルを根拠地とする有力豪族ドネリーは、この動きを見て翌年シドの勢力に加わることを決断した。いま一つ、さらに南にあるエスカリオはこの流れに乗らなかったものの、ベーグおよびこの二大勢力によって強固なものになったシドの王国に対してあえて敵対しようとは思っていない。
1,627年になって、北から猛獣軍団が押し寄せるようになった。北の地を支配下に収めたパジェリスの軍団だった。さすがのシドの力も獣には意味がなく、彼は多くの犠牲を払いながら（主にベーグの力で）これを撃退していた。そんな折、ヤミディスに一人の女性剣士が現れて防衛に弾みがつき、一時的に猛獣たちを退却に追い込んだ。ただし攻撃を受けているのはヤミディスだけではないため、苦しい戦いであることに違いはない。さらに南では自分と同じタイプらしいエドワード・ライネルの王国がこちらを伺っていると知るに及び、領土拡大策はひとまず置いて方針を防衛に切り替えると同時に、西に急成長したムーンクレアを巻き込むことを考えている。
カスタムキャストにて作成
1,596.3.24生, 33歳(見掛け同じ). 身長141cm 体重35kg.
かつてのミストル王国の姫
ミストル王国の首都で生まれ、当初はあまり注目もされない姫だった。栗色の髪と、赤い瞳が特徴。顔立ちは整った部類には入るが、決して自分が美しいと思ったことはない。
1,602年、大賢者セイリアン・ダルスが7年後の国家滅亡を予言した。大賢者は言った。王国の滅亡には大いなる闇の勢力が関わる。自分はこの撃退に助力するつもりだが、滅亡自体は避けられない。しかしフレディアを国外へ脱出させるべきだと。国王オルモア1世は、せめて我が子には天寿を全うして欲しいと願い、国に仕えていた呪術師ティルスティンガー・レーヴィルテノン（ムーンクレア教国の人物参照）に指示し、当時5歳だったフレディアを伴って脱出させた。ティルスティンガーは旧知の人物…後にシーカーズと呼ばれる冒険家集団の一人、リスティル・エル・ブラーンシュに連絡を取り、その故郷、シヴィルスクを頼ることにした。実は大賢者は、二つの予言をしていた。いま一方はティルスティンガーにのみ告げたものだった。王国滅亡後のさらに遠くない未来、闇がシヴィルスクの北に降り、これによってシヴィルスクが危機に瀕する。これを食い止めるためにフレディアの力が必要になる、だからフレディアはシヴィルスクにいるべきだ、というものだった。
リスティルは同胞たちを説得した。彼女はシヴィルスクアルフの中でも人間たちとともに外へ出るのを好んでいた人物である。ハーフアルフであることも手伝って閉鎖的な者の多いシヴィルスクでは決して評判が良い方ではなかったが、大賢者の予言はそうした彼らをも動かした。フレディアの記憶を封じることを条件に、シヴィルスクに匿うことを許されたのである。ティルスティンガーはミストルへ戻り、それからも王に仕えた。
フレディアは、彼女を護るために森に残ったリスティルに付いて勉学や魔術、そして農学を教わることにした。弓が得意なリスティルの真似もしてみた。師はフレディアの記憶の一部を封じ、自分の親のことを思い出せないようにした。フレディアにはあまり才能がなく、魔術そして弓術に関しては良い成績とは言えなかった。フレディアが自分の容姿に頓着しなかったのは、このように少女時代をアルフとともに過ごしたためである。森に住むピクシーのディズィーとは仲の良い友達になった。
7年後、予言の時。ミストルはアーリン・セーレントゥスという名のリッチに率いられる闇の軍勢の攻撃を受けた。ティルスティンガー、リスティルを除くシーカーズの面々、そして大賢者がこれを退けた。アーリンは破壊されたように思われた。しかし、同時にミストルの街の防備は破壊され、その後やってきたライトネア軍に抗することはできなかった。大賢者は純粋な人間同士の戦争であるライトネア戦には手を貸さなかった。オルモアはティルスティンガーに礼を言って自決し、街は占領された。
さらにその翌年、これも予言どおり、ノルアートに闇が降りた。アーリンがシヴィルスクの魔法に目を付けたのである。リスティルはシーカーズに集合をかけ、彼らにフレディアを託した。リスティルを除くシーカーズの面々は、即座に森を出立してノルアートへ向かった。ノルアートを越え、フレディアの故郷ミストルへ向かうために。
シーカーズが立ち去ったシヴィルスクにアーリンが奇襲を掛けた。一人残ったリスティルはアーリンに相対し、魔術の限りを尽くして時間を稼ごうとしたが、死者の王の強大な魔力の前に抗し得たのは1時間程度だった。アーリンは森の表の部分を破壊すると、シーカーズの後を追って北へ向かった。そして、希代の強者揃いと言われたシーカーズは、たった一体のリッチによって全滅させられた（彼らの出立に当たり、リスティルは彼女が大賢者から受けた言葉と身振りをあえて曲解し、フレディアがディズィーを連れていくことを許可した。これが全滅の原因かどうかは不明である）。
フレディアとディズィーだけが、その場に残された。フレディアの持つ力によって、アーリンはフレディアとその友達を知覚できなかったためである。そこに現れたのが、シヴィルスクアルフでありながら後に永世王国26人衆にも参加することになるエールである。彼は森へジャンプして姉である氏族長ダムとの相談の後、フレディアを今やライトネアによって破壊されていたミストルの街へ連れて行き、そこでフレディアの力を有効に利用する方法を見つけた。アーリンはシヴィルスクで自分が奪った魔術品がダミーであることに気づくと、新たにアンデッド軍を組織してシヴィルスク内部を襲わせた。エールはフレディアの力を用いて防衛隊を組織し、犠牲を出しながらもアーリンの軍を撃退し続けた。エールの力を持ってしても元締めであるアーリンの居所は特定できなかったが、シヴィルスク内部、アルフたちの聖域への侵入を防ぐことはできた。
アーリンは鬱憤を晴らすかのように南のホーメルト地方カプルカントで新たなアンデッド軍を組織し、その地を荒らし回った。年が変わって1,611年になると、アーリンはいったんシヴィルスクを諦めて軸足をホーメルトに移すことにした。ホーメルトには、彼の師とも言えるさらなる上位リッチであるアサノイス・ロデリカノスもいる。しかし、これが彼の運の尽きだった。折から訪れた冒険家集団…後に「第二キングスパーティ」と呼ばれる面々によってアーリンは隠れ家を特定され、直接対決の末に破壊された。アサノイス率いる「アリーシアの4リッチ」は、このとき初めて欠員を出すことになった。
なお、当時のブラックホースやジアザー・テレビジョンらの実力からすると、リッチの破壊という戦果は驚異的である。大賢者の助力なしには為し得ぬものだった。その大賢者セイリアンも今は亡く、これが彼の仕組んだシナリオであることを知っているのはイモータルのみである。
フレディアはその後18歳になってシヴィルスクを離れ、しばらくは冒険家として活動してみたが、結局足手まといになることが多くものにはならなかった。やはり才能がなかったのである。2年後にグリミディア王国の河口の街アガットで出会ったリンゴ農園師ファンダファーと結ばれて、現在ではリンゴ栽培の日々を送っている。リスティルと暮らしていたときに農作物を育てた経験が生きていることは言うまでもない。
呪術師ティルスティンガーは故国の滅亡時に北西へ逃れ、現在ではムーンクレア教国に住んでいるが、脱出時5歳だったフレディアはそもそも彼を良く覚えていないし、彼もまた、フレディアがグリミディアにいることは知らない。