人物

1,568.2.18生(エストメスランド暦9.7.30), 61歳(見掛け16歳). 身長142cm 体重39kg.

殺人鬼

滴るようなラベンダー色の髪と血色の良い肌を持つ健康的でよく笑う少女。瞳はシェルピンクで、ふわふわとした黒いワンピースを着ている。真珠の首飾りと腕輪を付けている他、耳にも小さな真珠を下げている。クリスタルの杖を持っている。この杖に魔力は込められてない。

とくに不自然なところはないが、実体はかつて混沌のイモータルによって作られた殺人兵器であり、人間的な感情は一切持ち合わせていない。現在は仕事として請け負った殺人を黙々とこなす日々である。活動に必要なのは空気と水、そして陽の光だけであり、これらおよび周囲に散在する魔力を吸収することで、食物は一切摂らなくても活動し続けることができる。1日後までの未来の像を描ける能力、そして半径100マイル内であればどこにでも接合点を作成し魔導門を開く能力を持つ。魔法やイモータルの介在なしにその不意打ちを防ぐことができる者はほとんどいない。そして首を切断されてさえ死ぬことがない身体により、圧倒的な成功率を誇る。これを剣術だけで防いだのはイルリック・カーサリアンやマリー・ルーンら数人だけである。

彼女の本体は腰であり、本来の位置に脳や心臓といった臓器はない。目や口も動作はするが完全にダミー。血液は少量が「それらしく」流れている。首を切り落とされれても吹き出すようなことはない。痛覚もないため、自分で首を拾って載せれば回復が始まり、1分も経たずに元通り接合する。

1,599.10.26生, 30歳(見掛け50歳). 身長153cm 体重38kg.

リアノの冒険家

南東のルソルガン山地内にある都市タラダス出身のリアノ。トパーズのような色の毛はリアノとしては一般的。澄んだスカイブルーの瞳はやや珍しい部類に属する。知的で魔術を好むリアノには珍しく力にものを言わせるタイプで、長剣一本で多くの危険を切り抜けて来ている。魔術は明かりを発生させるくらいである。

タラダスの平均的な家庭に生まれ、とくに不自由なく暮らしていたが、彼は幼い頃から外の世界への強い憧れを抱いていた。石工をしていた両親ともごくごく普通のリアノであり、息子が外へ行くことを認めようとはしなかった。兄や弟妹も同じだった。かつてはリアノが世界中にいて、一般的とは言えないものの誰でも知っている存在であり、探せばすぐに一人は見つかったものだった。しかしそれは伝説の詩人ワリスタルスが生きた昔のことであり、現在タラダス以外にリアノはいない。人間たちから奇異な目で見られ、怪物と見なされて襲われるのがオチだと、ほとんどの民は考えていた。

かつてほどの数ではないが、ロッキルムスターやファーランドなど、集団で住んでいる地域がエルヴァートにもまだある。エストメス大陸内でも預言者の森にあるノースフォートには氏族がいる。これはタラダスの支配階層、つまり王族を始めとした一部の者が、5世紀前にタラダス以外のリアノの存在を秘匿することを決めたことによる。現王トランセプトもまた、ノースフォートに遠い親戚がいることを知っている。レンダルクラスコが、10年前に家出同然でタラダスから飛び出して来たのには、この生まれ育った街以外にもまだ同族が住む場所があるはずだと考えたからである。なお、タラダス支配層でも、表エルヴァートの事情までは知悉していない。

この10年、北はマウリア王国のドリズル山脈、西は港町アズマズまで歩いたものの、いまだ同胞には一人も出会っていない。両親や友人の危惧していたように襲われることもあったが、幸いにも2年前にリアノの存在を知るアルフを含んだ冒険家たちの仲間になり、現在は共に行動している（もっとも、そのアルフもまた、生きたリアノに出会うのは初めてのことであり、相当驚いていたが）。大半はエストメスランド内で活動しているものの、人間の支配する国の存在とはあまり関わらないようにしている。北西にさらなる土地があることは知っているものの、ホーストヘルン帝国には足を踏み入れない方が良いと考えている。

1,594.3.18(エストメスランド暦35.8.30)生, 35歳(見掛け20歳). 身長160cm 体重56kg.

大統領

エストメスランドにおいて「ロード」は支配階層を意味する語、いわば称号であり、厳密には名前ではないが、ほとんどの州知事や大統領とその経験者は好んでこの称号を名乗る。引退後に名乗ってはならないという決まりもない。

クリル湖（現地ではゼレー）のほとり、リセルの街に生まれた。周囲をひきつけ、意のままに従わせる魔力を放出している。これは生来のものではないが、子供の頃に旅の魔術師の実験によって身についたものである。実年齢に比して見た目が圧倒的に若く保たれているのも、本人の意志ではなくこの実験の影響である。この能力を使って幼い頃から仲間を集め、そのリーダーとして活動していた。1,610年にはリセルが所属するラドリム州の州知事に当選した。州知事としては、リセルから州都ガヤを通り、東部ダシュに至る街道の整備に尽力した。

1,611年、州知事として2期目に入ることなく大統領選挙に立候補、17歳にして連邦の大統領に就任した。前任ロード・ワイゼンハントとの一騎打ちだった。大統領として首都ドーリアスに移っても街道整備にはとくに力を入れており、ラドリムのみならず全土の街道整備を国策とした。太い交通網の確保とその警備こそが安定の基盤だと考えているからである。現在はとくにイサマン州の西に伸びる2つの街道に注目しており、120年ぶりの対外戦争によって港町トリデ、アズマスのいずれかあるいは両方を領土とすることを考えている。エストメスランドはその広大な領土とは裏腹に外海に面した海岸を有していないためである。

戦士として卓越していると同時にテシアスの僧侶として神の御業も発揮する。ただし前述の実験の副作用として、魔力による攻撃によって常人以上に傷つきやすく、また魔法による傷の治りも遅いという弱点を持つ。このため守りの魔法で身を固めるようにしている。