概説:グレートアイス方面


エストメス大陸北部は、永久凍土によって北極大陸へ接続されている。グレートアイスは浮かぶ巨大な氷であり、下に陸地はない。10数mも掘ってみれば、下からは冷たい海水が溢れ出すことだろう。もっとも、この頑丈な氷を数m掘り下げることのできるものはあまりないのだが。

見渡す限りの氷原には目立った山塊もなく、ただ彼方まで、雪と氷に覆われた「大地」が続いている。ここは表エルヴァートと裏エルヴァートとをつなぐ文字どおりの「橋」である。表エルヴァートから裏エルヴァートに至る道は2つしかない。ゼルヴィス王国南北や、スメル大陸から西行した場合、<神の帳>によって強制的に裏エルヴァートの逆側にワープさせられる。ただ、北極大陸からグレートアイス経由、またはファンドランドからレインボーアイランド経由でのみ、裏エルヴァートへ到達可能である。

しかし、現実問題として数千kmになるこの土地を踏破するのはほとんど不可能である。この経路を伝って表裏エルヴァートを行き来したのは、過去カレンティシアス王国永世王国ホーストヘルン、そして果敢なミストル王国およびファームズ帝国のみである。前三者はすべて魔術によって、テレポートを繰り返しながら移動しているが、ミストルとファームズは主に商人の隊伍であり、魔術の助けを借りながら、海岸線近くを人足で踏破している(海岸線から弱冠数kmは、この「橋」の範囲内であり、ファームズも場所によっては海上を通っている)。

ファームズ帝国商人はエストメスの覇者ホーストヘルン帝国に迎えられ、当地での商業活動を許されている。そしてホースト、ヘルンを始めタンジャハッドやメルガス帝国、ダン・ウルギッド両首長国などで得られるもののみならず、遠くズィドラス大陸で得られる表エルヴァートにはないあらゆる食物や織り物などを満載した大型輸送車がふたたび北極へ向かい、停泊している船に積み荷を載せ換えてファームズへ帰還する。エストメスランドなどの亜熱帯・熱帯地域での作物に対しては厳重な保温魔術が使われている。

しかし、近年はアマリス帝国のエルドレス方面の海上規制が厳しく、ファームズの艦船が度々取り調べを受けそうになっている。アマリスはフェルナンドとともに最近裏エルヴァートの存在に気づき、これを調査しようと手を回している最中である。