人物

1,582.3.12生, 47歳(見掛け30歳). 身長169cm 体重70kg.

国王

肉体的にやや奇形の人物。手脚が普通より3割ほど長い。彼の剣術は少年時代にはこの地方で良く見られるものであったが、青年期に自らの身体的特徴を認識した上で極意を悟るようになり、現在では完全に我流である。彼の型は他に類を見ないものであり、初見で優位に立てるものはほとんどいない。恵まれた身体能力と優秀な頭脳を併せ持ち、戦士の頂点を極めて久しい。裏エルヴァートにおいて最強の剣客である。

野太刀のように反りのある剣を長短3本持ち歩く。刀身は鈍い色で、塗料ではなくこの地方で「灰砂」と呼ばれる鉱物（マグネシウム）の合金であることによる。魔法で刀身の酸化を防ぐようになっているが、指令語を発すると一部が剥がれた上で熱せられ、剣先の示す方向に強烈な閃光を放つ（この光を至近距離で直接見た者は、しばらく目が眩んで攻防双方にペナルティを負う）。鎧は両肩と胸当て程度しか付けていない。金属だが藤紫色に塗っている。これは彼の故郷付近で藤の花が咲き乱れるためである。

年齢の割に皺はない。薄い唇を吊り上げ、大胆不敵な笑みを浮かべていることが多い。腰まで届くストレートの長髪を後ろで一本の太い三編みにして垂らしている。その色は向かって左から右に赤から黄色へと鮮やかにグラデーションになっている。地毛はグレー。目尻の側で生え際が上下に分かれた特徴的な眉毛を持つ。細い吊り目の瞳は青紫。なお、彼の心臓は通常とは逆に右寄りにある。このため胸当てを付ける際も本来は右になるが、あえて左に付けているのは、ほとんどの相手が狙うとすれば左胸であることを逆手に取ったものである。

シトカ王国内は常に安定しておらず、小規模な戦闘がひっきりなしに発生し、野心家も多い。つい最近まで側近だった者が国王に襲いかかって来ることもある。ジュジンカの父カズカにしてからが、側近の裏切りによって暗殺されたのである。ジュジンカは翌日にはその男を惨殺し、王権の継続を宣言、数日後に即位した。これまでのところジュジンカは自身に向けられた刃のすべてを完璧に防ぎきり、襲撃者はいずれも返り討ちにされている。それでも襲撃が後を絶たないことが、この国を特殊なものとしている。

1,612年に30歳で即位した。母はカズカの第二妃であったミッツィで、こちらも1,620年に他界している。マジンカ、ラガルカという弟と、ラーズィという名の妹がいる。弟二人は国軍の司令官でありいまだ王位継承権は保持している。ラーズィはデカールという貴族に嫁している。妃は貴族ネクトカリスの娘ニーベリー。子供はヌザカ、クルガの二人でいずれも男子。

西側に居座ってマンダナグル社を設立、交易を行っているファームズ帝国（過去にはミストル王国も）のことは、内心快く思っていない。しかし、交易を独占し、それによってもたらされるものを得る方が益が大きく、自身や息子の権力を維持するために得策だと考えている。それがなくなれば、いつでも敵と見なして追い出す心づもりもある。

ジュジンカをはじめシトカの民は誰も表エルヴァートの存在を知らず、彼らがどこからやって来たのかを独自に調査している。これまでのところ、北の大陸（エストメス）東岸から船を出していることまでは判っているため、ファームズの本国はエストメス大陸のどこかにあるのだろうと考えている。彼らがシトカにとってファームズ以上に得体の知れない存在、ホーストヘルン領内を通過していることは判っている。国内事情もあってあまり大がかりな行動もできないため、それ以上の深入りは危険が大きすぎると判断され、現状ではそれ以上の情報を得られる目処は立っていない。

体長17cm 体重3kg.

（人間として）1,342.5.11生, 287歳(見掛け16歳). 身長159cm 体重41kg.

しゃべるヒバリ

ヌーガン湖南西のマサウ森北辺部に棲んでいるメスのヒバリ。標準よりはやや小さい。穏やかな性格で、困っている人間を助けるのを好む。知られていないが、この森で270年ほど暮らしている。人語を解し、時折森を訪れる子供たちと会話することもあるが、大人と会話することは稀である。会話するにしても、最初に他者に口外しないことを約束させる。

このヒバリの正体は、シトカが1,388年に滅ぼしたヤーキシア王国の第三王女である。それまでごくふつうの心優しい少女だったが、16歳のある日、メデイロスという名の魔術師に呪いをかけられ、現在の姿にされた。メデイロスは父王に恨みを抱いた男に雇われていた人物で、とくにフローリアに対して恨みがあるわけではなかった。周囲は誰もヒバリがフローリアであるとは判ってくれず、マサウの城から追い出されて絶望感にさいなまれながら森に逃げ込むことになった。一般的には「突然失踪した」「駆け落ちした」「メデイロスに殺された」などと言われたが、「今でも城の地下に幽閉されている」という話もある。当初徹底して人を避けたこともあり、ヒバリと彼女を結びつけて考える者はいなくなり、国も王朝も代わった今では単なる昔話の登場人物となっている。

長く森で動物たちと過ごすうちに心や癒やされ、今では寂しさを覚えつつも人との会話を楽しむことができるまでに回復している。現在の行動範囲は広く、北のイシュ・ヴォー（ザス・トラス海）周辺は頻繁に飛んでいる。アゼナ山脈沿いに北西へ飛び、ラウドス海を越えてトーンダス半島へ出ることもある。トーンサウリ山脈以北、トーンレディン山脈以西にはまだ行ったことがない。東へ飛ぶこともあるが、シトカの首都ネイサンのある北東に飛ぶことはなく、ナカザン山脈を越えて南に飛んだこともない。

メデイロスは当時としては比較的強い力を持った存在ではあったが、卓越した魔術師であれば彼女の呪いを解くことは可能である。無論そのためには、ヒバリがフローリア姫であることを知っている必要があるが。親しかった者たちがとうに世を去っていることも、王国が代わっていることも彼女は十分判っている。姫であった頃には裁縫が好きで比較的得意としていた。彼女の時は16歳で止まっている。呪いが解かれれば、美しい16歳の姿のまま、ライムライトの明るい髪とアクアマリンの瞳を持つ、裁縫の好きな娘に戻ることができる。