概要

別名「高地の国」と呼ばれるエス・ヘルデナドは、ズィドラス大陸中央北寄り、シトカ王国の南、シルヴァーピーク領の北北西、ナカザン山脈にある大きな台地のさらに上に存在する小さな都市国家である。台地はエステラストと呼ばれ、点在した人々はいるが街としてそれなりの人口がまとまっているのはエス・ヘルデナドのみ。

シトカ王国の大きな湖イシュ・ヴォー（ザス・トラス海）へ注ぎ込むヌーガン河は、エステラスト台地の崖下が源流とされている。実際には、この崖下は地下を通る河の湧出口であり、さらにその先が存在する。水流に逆らって地下トンネルを進めば、やがてエステラスト中心北寄りに至り再び地上へ出る。エステラストの地を潤すこの河は現地ではミアコール河と呼ばれ、台地中央の湖（ミアコール湖）に至る。それはそのままエス・ヘルデナドにある宮殿の名前にもなっている。湖へ流れ込む水は台地の四方八方から集まってきているが、いずれも崖の手前までであり、そこから突然湧き出しているように見える。エステラストに住む人々は、この状況に疑問を抱いていない。これらの水は、周辺の山々の中にある水脈から魔術でくみ上げ、崖上から流しているものである。全部で10あるこれらの大規模な揚水装置は現地の人にすら知られていないが、誰がそうしたかは知っている。それは初代国王である伝説の王ユパンキの賜物であると。

エス・ヘルデナドは300年ほど前にできた国である。元々はルシダ王国（現在はシトカ王国に組み込まれている）から逃れた者たちの集まりである。現在の支配者はインティという名の12歳の少女。王家に生まれた者にはクリ・パスニャ（彼らの言葉で「紫の娘」）と呼ばれる魔導の力があり、ユパンキはとくにそれが強かった。その力を持って、水の確保に悩んでいたこの地に絶えることのない水流をもたらし、王となった。その子孫たちも、弱いながらもその力を受け継いでいた。インティは元々持っていた力も大きかったが、それに加えて山に住む流れの魔術師からの手ほどきがあり、二つの魔術系統が交錯した結果彼女の力は代々の王たちとは比較にならないほど大きなものになった。父王カパックが死んだ後、叔父たちが幼い彼女の前に王位を手に入れようとした。彼女は自らの力を解き放って叔父たちを恐慌状態にした。

エス・ヘルデナドは険しい山中よりさらに高いところにあることもあって、訪れる者はそう多くない。ほとんどが人間であり、周囲の山中にドワーフはいるが、アルフはまずいない。