コルコランド戦争概要

第一次コルコランド戦争

※トルク連邦はオウル氏族国、ナーン国、ミード自由国からなる三国同盟。

当時のコルコランドの国家群は、いくつかの衛星国家を除けば1,565年にスメル帝国から独立した国家とその後継国家である。基本的には政治体制により2つのグループに分かれていた。コルコランド王国の分裂後に民衆による自治を基盤とする体制を選んだ枢軸国と、王や氏族による統治を継承する連合国である。ただし、コルコランド戦争時の状況を見ると、共和制対君主制という観点では、枢軸国ではガリー首長国が君主制、連合国ではヘルメス共和国が共和制となる。これらは国の立地や個人的な結びつき、交易などによりどちらに属するかを選択した結果である。連合国のうち、ミンス王国はさらにスメル帝国の衛星国家という側面を持っており、スメル皇帝の意思をその行動規範としていた。

第一次コルコランド戦争は、この対立軸を利用してスメルが共和国陣営に打撃を与えようとしたものである。

ミンス軍の突然の東進を端緒とし、ナスク、メルヴェット、タルカスがそれに続き、年が開けてからはヘルメスがこれに加わった。半年間、連合軍は各地で共和軍を破った。盟主メイスンの首都ミトランドにミンスやヘルメスの軍が迫った。

ここで現れたのが、ジャック・シュナイダーである。ジャックはミトランドの試作戦闘機を駆って各地の戦場を転戦、その天才的な空戦技術によって敵航空兵力を壊滅させ、地上軍にも痛打を与えた。彼の登場以降、戦闘は一方的な展開となり、共和軍が連合軍の各本土に侵出、連合国は次々と降伏した。最後に仕掛け人だったミンスが首都を占領され、戦争は終結した。ジャックは「コルコランドの英雄」と呼ばれるようになった。

これによる国境線の変更はなかったが、以降連合軍の各国家には共和軍が常駐することになり、また賠償もあり、実質的に共和国側に支配されることになった。

第二次コルコランド戦争

アリカメン共和国、クラストファナ連合は戦争に加わっていないが、同様にスメル軍により占領された。

第一次コルコランド戦争の帰結は、到底スメル皇帝シュメール・シャイダーを満足させるものではなかった。シュメールはスメル帝国の持てる力をコルコランドに向け、全土を制圧することにした。

スメルの基本戦略は以下のとおりだった。

• アルディア山脈を越えた帝国軍が、カイオーンの共和軍を最速で駆逐、そこで東西に分かれる。
• 西はミンス王国を目指し、さらに西方から来たアルジャストレル帝国軍と連携して共和軍を挟撃・殲滅。
• 東は一気にミトランドを突き共和軍を撃破。
• 後続でカスティール、デランナ、メジェンナを使嗾してミトランド湖東側を蹂躙する。
• アルジャストレルよりさらに西方から迂回させた帝国軍により、コルコランド西側を蹂躙する。

しかし、シュメールの想定どおりに進んだのはカイオーンのみだった。東に分かれた帝国軍は、ミトランド湖南端のディアスタで再びジャック・シュナイダーによりその進撃を完全に停止させられた。シュメールが単機でジャックに空戦を挑み、その戦闘機を撃墜したが、溜飲が下がったのは一時だった。続くミンス王国内サネカの戦いでは、西から現れるはずだったアルジャストレル帝国軍が一兵たりとも姿を見せず、帝国軍は共和軍に敗北した。後にニーチャ市国から報告がもたらされ、アルジャストレルの皇帝プレルビーが裏切って共和軍とともに帝国軍を撃退したと知ったシュメールは、怒り狂ったという。ジャックを旗印とした共和軍は、アルディア山脈を越えてスメル側へ逆侵攻した（コルコランド地方では、この後の戦局を「スメル戦争」と呼ぶ）。

ジャックは街道を南下せず、山中で東に折れて死の荒野（現在の常緑の平野）方向へ軍を進めた。山脈南端のブラックゲート砦を攻略することによる消耗を避けたとされる。対して帝国軍は、ゲリラ戦術により共和軍を遅滞させた。これは、ロッキルムスター方面の帝国軍が急進し、共和軍の背後を突くための時間を稼ぐためであったが、ジャックを始め共和軍は誰もそれを見抜けなかった。かくて死の荒野の戦いにおいて、共和軍は前後を圧倒的な帝国軍に挟まれて潰走し、ジャックは必死でミトランドへ戻って地下生活を送ることになる。

なお、アルジャストレルそしてニーチャはロッキルムスター師団の一部によって占領され、支配者は即日首を刎ねられることになった。

これまでもそうだったように、この間モーデンケルンやルエンカシフォンといった有力貴族は基本的に戦争に参加していない（個人レベルでは、いないことはなかった程度）。彼らは当初から背後にいるスメルの思惑を見て取っており、戦争の帰結を予想していた。共和国軍には一切手を貸さず、占領軍としてやって来た帝国軍に挨拶をした程度である。