オスメリア森

帝国北西部、北テルドア山地とアルディア山脈の間にある大きな森林。現在クルル、フィルサン、リューネット、ターシュミィという4つのアルフ氏族がこの森に住んでいる。戦闘力に長けた者が多いリューネットがダルジャン湖畔のメイカナス（森の入り口に近い）に、他3氏族がニルセン湖に面したサツカナスに暮らす。1,630年現在はある程度帝国との交流もある。

かつてはエルナト湖畔にトゥコリカナスが、メイカナスの対岸にタルゲリカナスが、そこから川を遡上したところにフィフカナスがあり、5つの氏族がメイカナス、サツカナスを含む5つの街に暮らしていた。3つの湖は、まとめてファリエル湖群と呼ばれる。メイカナス、サツカナス以外の3つは、335年から20年続いたスメル帝国の侵攻で壊滅している。その中でもっとも激しい攻撃にさらされたのが、タピエス氏族の暮らしていたトゥコリカナスである。本拠地のタピエス氏族は一人も生き延びることができなかった。

その始祖は大白妖精の一人クレタミル・フレイセル。フィルサンはフレイセルが時代を経て変化した名前。当初はクレタミルの直系がこの森を統括するある意味で王の立場にあったが、時代は下り、現在ではリューネットが指導的立場になる。

ラムサダス帝国の前身であるスメル帝国では、この森にアルフは存在しないものとされた。335年、時の皇帝アスノル1世がこの森に大軍を送り、20年をかけてこの森を焼却し、街を破壊した（実際には、20年は軍部の怠慢もあって慢性的なものになった。業を煮やした皇帝が「撲滅令」を発令したことで軍部が総力をあげて森を攻めることになった）。オスメリア焼却作戦と呼ばれるこの作戦で、オスメリアアルフは生きたまま焼かれ、あるいは帝国中央へ連行されて奴隷として各種重労働の末に死亡し、絶滅したと言われていた。森で犠牲となったアルフは200以上、中央へ連行され、重労働を課されて死亡したのは500以上とされる。なお、その後アスノル1世はホーリック谷から来たダークアルフによって暗殺され、50年をかけてホーリックアルフに帝国を乗っ取られることになるが、これは互いに嫌悪する間柄とはいえ、劣後種である（と彼らが信じる）人間が光のアルフ氏族を滅亡させたことが、その遠因ともなっている。

また当時この森にはリンシェルという鳥と人間の特徴をもった種族が暮らしていた。ホーメルト南島にいるグリトニルのような種族だった。リンシェルもスメル軍により手当たり次第殺され、焼かれ、絶滅している。グリトニルもリンシェル同様、外界では絶滅したとされているが、こちらは単に森の奥深くから出てこなくなっただけでとくに他種族から脅かされたわけではない。

スメル帝国が滅び、ラムサダスが帝国を興してからの調査で、4つの氏族のわずかな者が洞窟や深い森の中、そして西のアルディア山脈へ潜伏して虐殺を生き延び、13世紀の間にある程度の数を回復していることが確認された。彼らは森に魔法をかけ、外界との接触をほぼ完全に絶つことで自分たちが絶滅したのだと信じさせていた。もっとも、オスメリアに生き残りがいることは、その前から知っている者は知っていた。近年では、例えば永世王国26人衆のファイナルランダーは本名ラクシュール・ウェルカー・クルルと言い、その名のとおりクルル氏族のアルフである。当時の宰相レイトン・インスレーを始め数人はそのことを認識していた。またエルスルム王国から来たリンナ・リマーク・エネルスもスメル時代の1,604年にこの森に入り、オスメリアの民と語らい、住み着くことになった。

ラムサダス帝国がリンナの持つ力に目をつけて公職への参加依頼のためこの森を定期的に訪れている。現在のところリンナにその気はないが、彼女に代わってファンノルカ・リューネットという若者（氏族長マレスヴィースの次男）が外の世界に興味を持ち、帝国軍に参加している。

森の東側には、オスメリア作戦時に建設された古い砦、通称オスメリア砦がある。355年に作戦が終了し、その後1世紀ほど使われていたが廃棄されている。現在では砦北方の丘陵地帯にいたオークによって占拠されている。

「オスメリア」はこの大陸や旧帝国の名である「スメル」と、同一の語源を持つ言葉である。アルディア山中にあるスメリア湖は、その関連性を示した名前でもある。