概要

ウィザードランドはセイレイ大陸の中央、シャマトル山脈とデライン山脈の名前が分かれるあたりに位置する、山麓にある都市国家である。シャマトル山脈とカルサス山脈に挟まれた土地の奥に位置しており、ウィザードランド以外に見るべきものも少ないこの地を訪れる者はそう多くない。街そのものはレッドシティと呼ばれ、通称は「赤き魔術師の都」である。この街の赤は中立や中庸を意味するものであり、ホーメルト北島にある黒の都ナイトサイト（デスヴァレー）、ホーメルト南島にあるファーランドと合わせ、3魔都とも呼ばれる。人口はおよそ1,500で、時期によって前後するものの1,630年ではおおよそ6割を魔術師が占める。中堅以上の魔術師となると100人程度であり、上位と言えるのは20人程度。非魔術師については魔術師の家族というケースが多いものの、現在では全員がまったく魔術とは無縁という家族もいる。

市長は魔術師マウレリアス・レテルナー。かつてホーメルト南島の東半分を支配したドバヌール王国で軍師をしていた人物である。その実力はレッドシティ1、ホーメルトでも指折りとされる。1,620年、ドバヌールで最強の提督と呼ばれたシルクシア・ムライトルーク（現フェルナンド帝国）が、自らレッドシティを訪れて市長カディム・ウル・ハリスに直談判し、当時は魔術師部隊長だったマウレリアスの派遣を取り付けた。来るべきフェルナンドとの戦いにおける助力のつもりだった。

しかし、1,628年になって、魔術師部隊の実力者の一人、アミル・ハキームが反乱を起こした。彼は個人の不満よりもむしろ、下層の者たちや魔術師以外の民たちがかねてから抱いていた不満を代弁する形で反旗を翻した。すなわち、市長カディムが長年行なってきた利益誘導と、友人らへのあからさまな利益供与に対するものである。アミルはカディムを拉致して立てこもった（カディムは、魔術の実力ではなく人脈でのし上がった人物だった）。

フリンキアに滞在していたマウレリアスは、即日知らせを受けると翌日にはレッドシティへ帰還して反乱勢力との戦闘を開始した。年をまたいで最終的にはアミルを排除、内乱を鎮圧することができたが、既にカディムはアミルによって殺害されていた。そのためマウレリアスが次代の市長となった。ただ、鎮圧と事後処理で身動きが取れなくなってしまったという側面もある。守護の契約をしていたドバヌールは、反乱鎮圧の間にフェルナンドによって電撃的に滅ぼされることになった。ドバヌール首都フリンキア落城は、アミルが死亡した翌日である。マウレリアスの力がその戦争で発揮されることはなかった。フェルナンドは南ホーメルトを併合した余勢を駆ってセイレイ大陸にも派兵することになったが、マウレリアスは街の代表として中立を取り付ける程度のことしかできなかった。なお、アミルの反乱自体がフェルナンドの策謀だという噂も一部にはあるが、実際には本当に偶然の産物である。

他に、永世王国26人衆に参加するワイズ・ドリアバードがウィザードランド出身である。永世王国が目を付けたのは実力No.1と言われたマウレリアスだったが、彼は自身の参加を断り、代わりに「自分と同レベルの力の持ち主である」として友人のワイズを紹介した。

レッドシティがいつからそこにあったかは知られていない。一般的にその名が知られたのは、1,440年に当時の市長ライヒ・レベスクがライトネアを訪れており、そこで現在の連王シラカン8世と魔法戦を繰り広げたことによる。実際にはおよそ1,000年前、魔術師たちが現在の街西部に集合小屋を建築したのがその始まりである。この小屋はしばらく残っていたが、拡張に次ぐ拡張の中で取り壊され、現存していない。