人物

1,484.4.8生, 145歳(見掛け30歳). 身長164cm 体重64kg.

ライトハイ国王

前王アレウス3世の1,573年に即位した。本名はニクサス。妃はストラトニケ。子供は現在ラカッシュ王子のみ。弟が一人、妹がひとりいる。妹は将軍メルレアヌスに嫁している。

ダークグレーの短髪、ダークグリーンの瞳は吊り目。眉毛はやや垂れ気味のため、少々情けない印象を与えることがある。肌の色はライトネアの王族の中で一番、標準的な人間に近い。それは血のせいでもある。ライトハイは現在の4王家のうち一番、祖先の血が薄くなっている。ただし、それは魔力の大きさと比例するものではない。アレウス4世の現在の魔力は、4王の中では連王シラカン8世に次ぐものとなっている。無論、アレウス自らそれをひけらかしたり、知らしめたりするつもりはないが。

その血と比例するように、選民思想的な思考もアレウスの一族は薄まっている。とくにアレウス3世の妃は上級民でも最下層であり、さらにストラトニケは下級民である（彼女の父は、ヘイタール師団の副師団長である）。これは他の王族には（今のところ）真似のできないことである。他の王たちはこれについて、物好きと感じているが、元より仲間意識など感じていないため、それをあえて話題に載せたりはしない。

血の影響は、他のところにも出ている。寿命である。アレウスの王族は、初代アレウス1世から200歳代で死亡している。これは一般的な上級民の半分程度である。アレウス自身はこのことをとくに気にしていない。現在の寿命でも、通常の人間と比べれば倍以上ある。興味を追求するには十分であろうと思っている。

ライトハイの王権は、元々はシラカン4世の弟であるテセウス1世から始まった。1,182年に息子の代で断絶し、上級民のアレウスが即位してアレウス1世を名乗った。アレウス1世の妃は、シラカン4世の孫アンテア。彼女はスメル大陸でアントニン・リエル・ハリエット・シャンメリーという名で知られる。

1,612.10.4生, 17歳(見掛け同じ). 身長164cm 体重55kg.

ライトマイ王族

王弟ヒュギリピデスの第三王子で王位継承権は5番目。グレイハウンドと名を変えて冒険の日々を送る。

代々優れた魔術師を輩出するライトネアの王族にあって、彼はまったく魔術を使うことができない。強い腕力と優秀な戦士となりうる才能は現れている反面、魔術は仮にの才能があったとしても現在までうまくいった試しがない。そのため彼は王家のなかで爪弾きにされている。しかし、両親や二人の兄ロマノスとメナンドロスから疎まれながら、1,622年に出された国王クレタミソス3世の命令によって王子の地位に留め置かれている。

このような子は長い連合王国の歴史の中で皆無というわけではないが、大抵は下級民に落とされたりして15歳に至っても王子のままという例はない。戦士という職業はこの連合王国では下級民のものと考えられており、下級民が王族であることは許されなかった。そして、そうした例はいずれも上級民から選ばれる王妃から生まれた子ではなく、王の気まぐれによって下級民の女が産んだ子である。エクサスもまた、王妃テュフォーの子ではないと言われている。エクサス本人のみならず、テュフォーもそう考えている。現実としてはテュフォーがエクサスを産んだ後悔から彼を産んだ前後の記憶を無意識に封じているだけで、エクサスは紛れもないテュフォーの子である。上級民出身の王妃から生まれた子で魔術の才能が皆無だった例はこれまで一度もない。これが何を意味するものかはいまだ不明である。

エクサスは自身に魔術の才がないことをコンプレックスとし、13歳頃からは王族の地位を棄てる覚悟で冒険を求めた。「勇者」という虚像を求め、自分が危険な目に遭えばそういう人物がきっと現れるだろうという考えと、長期間国を留守にすれば、さすがの冷静な伯父も彼を見放すことだろうという考えがあった。しかし何度そうやって抜け出しても状況は何も変わらず、それどころか始めの頃には激怒した両親も何も言わなくなった。兄たちだけが変わらず蔑んだような「また帰って来たんだな」などの台詞を浴びせていた。

彼を大きく変えたのが、南方ロングッド出身の放浪の戦士、ブラックホースの存在を知ったことである。1,626年だった。まずエクサスは、ブラックホースの強烈な勇者性に引かれた。数々の偉業を達成した人物への憧れを抱いたのである。翌年エクサスはネアー海を渡り、単身ホーメルト地方、フェルナンド帝国へと乗り込んだ。帝国の皇帝アーサー・フェルナンドとブラックホースが親友同士であることは知られており、帝国の首都近辺にいれば会えるのではないかという楽観的な予測による。連合王国とフェルナンド帝国とは数年前の海戦以来友好的な雰囲気とは言いがたく、異端とは言え王族である自分にとって危険を伴う旅であることは明らかだったが。グレイハウンド（灰色の猟犬）という名は自分で考えたものであるが、そこにブラックホース（黒い馬）の影響があることは、エクサスがブラックホースに憧れていることを知る者なら誰でも気づくことである。

都合3ヶ月以上、帝国に滞在した。その間何度か自分を監視する目に気づくことはあったが、接触はなかった。エクサスはブラックホースに関する情報を集め、本人に会うことはなかったが、その人物が彼が思い描いていたような超人的な人物ではないことを知るに至った。彼は落胆するどころか、ますますブラックホースという存在に興味を抱くようになった。ブラックホースは自らが何者なのか、などと考えはしない。あるがままに受け入れ、自然体でどこへでも行く。この生き方を知ったエクサスは、戦士である自分を疎み続けてきた今までの生き方を棄て、徐々にではあるが確固たる自信を持つようになって行った。そしてこれを境に外出の目的も変わった。ブラックホースを探索してその生き方を彼の口から直接聞くため、と。

エクサスは1,629年になってブラックホースに実際に出会い、ごく短期間ではあるが剣の修行を受けた。世界広しといえど、ブラックホースに直接剣の指導を受けた者は数少ない。これがエクサスが生きて行く上での自信のひとつとなっていることは言うまでもない。なお、この年のはじめにはふとした偶然からアンドリュー・フェルナンドやアザワイズ・テレビジョンといったキングスパーティの第二世代と行動を共にし、ルーンワールドを旅することになった。

1,382.12.28生, 247歳(見掛け50歳). 身長159cm 体重55kg.

ライトマイ王国国王、永世王国26人衆

本名イオドシウス。元々の王族であるリムレス4世を排し、新たな国王となったクレタミソス1世の孫。1,609年から在位している。ヒセオドスという息子がおり、クレタミソス4世となることはほぼ確定している。イオドシウスの弟ヒュギリピデスが王位継承権第二位である。イオドシウスの息子はヒセオドスひとりだが、ヒュギリピデスには3人の男子がいる（ただ、この3人のうち末弟エクサスは魔術の力を持たないこともあって、仮にヒセオドス、ヒュギリピデス、兄2人になにかあっても、実際に王位に就けるかどうかは疑問視されているが）。

イオドシウスは、必ずしも国内で評判の良い方ではない。少なくとも上級民の間でははっきりと不満の方が大きくなっている。これはイオドシウスの、ライトール族としてはきわめて稀な穏やかで静かな性格による。その分、魔力のない下層民からの支持は高くなっているというわけである。ライトネアでもっとも重要視されている魔術の才は確実にヒュギリピデスを凌いでおり、イオドシウスが国王に就いていること自体は仕方ないと考えられているが、「不慮の事故」を願う上級民は多い。これには実弟ヒュギリピデスも含まれている。

ポリモーフによって姿を変え、イオドシウス・エンテリアノスという名で永世王国の一員として活動している。ライトネアでは王族のみこのことを知っている。永世王国ではメロスと宰相サヨコ・イデナリ、それにエール・ブラーンシュとゾーリフだけが知っているのみである。イオドシウス・エンテリアノスとして一般に知られているのは、ジェトールあるいはライトネアの出身だと言われている程度である。イオドシウスという名前はライトネアではとくに珍しいものではないため、結び付けて考える人もいない。

ライトネア王族（ライトール）を26人衆に加えることには慎重な意見もあったが、過去に例がないわけではなく、また今後ホーストヘルンを筆頭とした混沌の勢力と対峙することを想定すると、表エルヴァートの総力を結集する必要があることは明白だった。そこで、ライトールの中でも比較的話の通じやすいクレタミソス3世に白羽の矢が立った。

長命であるライトール族のため、26人衆ではゾーリフ、エール、ノーリに次ぐ247歳であり、年齢的にはアルフであるフレイミア・サリスファネルよりも歳上である。

1,295.3.10生, 334歳(見掛け50歳). 身長161cm 体重50kg.

連王、ライトネア国王

皺のあるアルカイックな顔に、左右に10cmほどのふさっとした口髭を調え、そして同程度の長さの顎髭を生やす。色は青みを帯びた濃いグレー。肌はかなり赤く、その身にディアボラスの血が流れていることをわずかに匂わせる。フードのない紫地にグレーの帯が入ったローブをまとう。金のメダルで留める。帽子も紫で、ピューリタンハットのような形で高い。刃物を持つことは少なく、大抵はウィザードリィスタッフあるいは何らかのロッドを持つ。

前王シラカン7世の次男として生まれた。幼少時の名はクリフレイデスである。兄は地下世界、ナイトメア連合王国の連王サドヴァン4世で本名はマヤルクサス。当初は兄がこの国を継ぐ予定であった。1,434年にナイトメアのサドヴァン3世から養子の依頼があった時も、当然クリフレイデスが向かうことになった。しかし、彼はこの時点で特段の才能を示しておらず、また地下の薄暗い世界に行くことを嫌った。サドヴァンはクリフレイデスを見て「養子にはできない」と言い、さらに「長男を連れて来い」と要求した。

自国のみの国力から行けば、ライトネアはナイトメアに従う必要はない。しかし、ナイトメアは裏でサンレール大陸全体を支配する大国ザクリズルと同盟関係を結んでいた。サドヴァンが要求すれば、ザクリズルは数百万と言われるアンデッド軍をライトネアへ送ることができると考えられた。総力を結集すればあるいはこれを撃退できるかも知れないが、そこまでの危険を冒すことはできない。7世は仕方なくマヤルクサスを地下へ送り、クリフレイデスを後継者とした。するとマヤルクサスはクリフレイデスとは逆に地下の雰囲気を一目で気に入ってしまい、通信で自分から養子になると送って来た。サドヴァン3世は同年末に死去し、マヤルクサスはサドヴァン4世として即位した。

クリフレイデスがメキメキとその力を増大させるのは、この騒動の10年以上後のことである。これには1,440年のある人物との出会いが関係している。マサロスの街にやって来ていた当時のレッドシティ市長ライヒ・レベスクと偶然鉢合わせ、個人戦闘に発展した。この時のクリフレイデスでは市長にはまったく敵わなかった。しかし市長は、去り際にある魔術の秘訣を口にした。それは、基本的にすべて独力で身につけて行くことが期待されるライトネア王家では決して得られぬものだった。

父のシラカン7世は1,475年にアルセンの世継ぎ問題に介入し、第一王子マルシスに加勢することで3年後には王国全体をライトネアの支配下に収める事に成功した。さらに2年後、即位したマルシスを殺害し、シラカン自身がその王位を兼任することとした。

妃のミレトーとは1,500年に婚礼を上げ、18年後に長男マルキウスが誕生。その頃には彼は父親をも凌ぐ力を手に入れていたが、彼は自分の力を決して父王には示さなかった。自分は大した才能もない無能者だと思わせておいたのである。その陰で、彼は密かに宮廷内を回って貴族や将軍に味方を増やして行った。そして1,520年、対ジェトール政策を話し合う会議で事件は起きた。ジェトール王国に対し消極的だった父王と対立した彼は、かねてからの計画を実行に移し、父王に退位要求を突きつけた。そして拒否されると、一瞬も躊躇うことなく魔法で玉座ごと微塵切りにした。こうして彼は連王の位に就いた。

ジェトールへの出兵は、同じくジェトールに対し関心を示していたミストル王国と三つ巴の抗争となったことで、最終的には大した戦果を得られないまま撤収することになった。8世はこれによってミストルを完全に破壊することを目標とし、この後はファームズを巻き込んだ散発的な戦争となる。

その後アイスラント南進に対抗して一時的に手を組み、これを撃退すると再び戦闘を再開するが、1,580年代に入って8世はファームズと一時的に手を組むことを選択し、ファームズにより弱体化したミストルをザート湾の戦いに破った。ザート湾岸に栄えた首都ミスリオは王城のみならずすべての建築物が破壊され、生物は鼠に至るまで虐殺された。現在ではアンデッドの巣窟と化している、ミスリオ跡である。ライトネアはネアー海からデュール内海に至る版図となり、以降はファームズ、ヘレネスとの三すくみとなる。

なお、7世が対外的に慎重姿勢だったのは、かつて在野の名軍師と呼ばれたキトラカ・カグ招聘に失敗し、それ以降対外的野心を失っていたからである。

1,530年に次男エリトリアス誕生。

1,608年にアルセンでフィニアス・カバスが独立宣言。これには強攻策を主張する者、これを機に手を引くことを勧める者とに分かれた。しかし、1,611年に、隣国ヘレネスが新国家ジアザーの電撃戦により滅亡した。8世にとって完全に虚を衝かれた事件で、当然ジアザーを危険視せぬわけには行かなかった。とは言え闇雲に攻め入る愚を犯さず、しばらくはファームズを動かして内情を探るつもりだった。アルセンのことはここで捨て置かれることになった。

1,614年の混沌戦争では国内各地も甚大な被害を被ったが、滅亡の憂き目に遭ったフェルナンドなどと比べれば遥かにましだった。それから一年も経たず、ファームズとともにジアザー帝国シーラン地方に侵攻したことからも明らかである。

この侵攻はジアザーがロングッドとの戦端を開いた直後に発覚したため、8世の電撃的な出兵と考える者も多く、新生フェルナンド王アーサーでさえ一報を受けた瞬間はジアザー滅亡という最悪のシナリオを想定したほどだった。しかし、実際にはロングッド戦役前からファームズで練られていた計画であり、白色騎士団の護りがさらに弱まったタイミングになったのは偶然である。逆に8世は作戦漏洩による待ち伏せの可能性も考えていた。

何れにせよ絶対的に有利と思われたこの侵攻は、ジアザー本人の策動によって不首尾に終わった。ファームズのランセス将軍の力を利用して白色騎士団将軍を一人戦死せしめたとは言え、ライトネアにとっては大した収穫のないもので、8世はさらにジアザーを危険視するようになる。別働隊をファームズに対して進軍させ、ファームズから領土を割譲させて溜飲を下げることはできたが、今度はランセスによって自軍の将軍も一人戦死させられたため、勝利の酒は苦いものだった。

ランセス将軍という稀有な…出鱈目な強さを持つ戦術家は、それ以前の二度のジアザー戦でも敵に大きな損害を与えて自軍の崩壊を防いでいると報告を受けていた。また、ランセスへの待遇は巨大な武勲に見合うものではないという報告も。従ってシラカンはそれから、このランセスの力を活用してジアザーに損害を与える手を模索しているが、将軍の皇帝への忠誠心は意外にも強く、現在に至るまでうまく行っていない。

ただし、1,629年にジアザー帝国に出現したイモータル級モンスターへの対応では、そうした敵視を一旦鞘に収めてジアザーを含む第二キングスパーティに加わって地下世界を訪れ、およそ1世紀ぶりに対面した実兄にアーティファクト「封印の壷」の提供を依頼した。隣国に出現した強大なモンスターがいずれ自国にやって来ることを想定したからであり、この探索行を勧めたファーランド市長セルミアス・ミルフがかの大賢者セイリアン・ダルスの弟子だと知っていたからでもある。シラカンは魔術を極めたと言われる存在の一人ではあるが、セイリアンの魔導が自分とは比較にならないことくらいは解っていた。

この後フェルナンドのホーメルト統一を受けてエルスルムとの同盟を結ぶなど、アマリス（ジアザーから改称）に加えフェルナンドにも敵対している。フェルナンドがシリアとの戦闘で大打撃を被ったことにはほくそ笑まずにはいられなかった。

1,212.5.1生, 417歳(見掛け60歳). 身長163cm 体重61kg.

ディルゴ魔法学校校長

1,587年から40年以上にわたって魔法学校の校長を務める（当時の首都はヌーであった）。長くつやのない白髪で、豊かな口髭と顎髭が特徴。にこやかな瞳はターコイズブルー。肌には皺も多いが、まだまだ体力は万全であり全く衰えを見せない。メロンイエローのローブに身を包み、ジネストラの杖を持つ。魔法の研究、後進の育成と同時に若い女性への胆力も持ち続けている。100年以上にわたって一介の冒険者として様々な場所で活躍してきた後、魔法学校に赴任した。

貴族のなかでは比較的穏健派で、戦士や職人といった下級民にも一定の礼をもって接するし、非公式の場ともなれば上級民と下級民にはまったく差を付けない。また、上級民が下級民にあまりに度が過ぎた扱いをすれば、諫めようともする。他の上級民にも時折そうした態度を見せる者はいるが、それを常時保つ者は皆無である。ネレウスはそれが一貫している。連王シラカン8世はその点に敬意を抱いているしそれを示してもいる。

ネレウスも、若い頃は他の上級民たちと大して変わらなかった。様々な場所へ旅をしている間、他国の人間や奴隷たちとも会話をする機会があり、次第に自国のありように疑問を抱くようになった。その経験を持って魔法学校の教師のひとりに招聘されたが、下級民の生徒にも礼儀正しく接する態度に、他の教師たちは良い顔をしなかった。しかしネレウスの実力は認めざるを得なかったし、彼が受け持った生徒もまた優秀だった。そのネレウスの校長就任にとくに強硬に反対したのが、有力貴族出身のレニアだった。彼女は彼に貴族としてのあり方を何度となく説いたものの、いつも穏やかに受け流され、のれんに腕押しだった。そうしているうちに、彼女が下級民に対して暴言を吐いたのを聞いたネレウスは、レニアを叱りつけた。公衆の面前で叱責を受けたことのないレニアはその事態に取り乱し、逃げ出してしまった。その後様々なことがあり、レニアはネレウスの妻となった。

その後も様々な妨害工作が試みられたものの、ネレウスが校長に就任するのを、誰も止めることはできなかった。

1,524.10.17生, 105歳(見掛け40歳). 身長165cm 体重64kg.

ライトクル王国国王

1,601年から在位する。本名はメレシウス。現在の4人の王では一番の若手。しかし性格的には一番過激であり、選民思想的でもある。自らも簒奪者の子孫でありながら、王家の神聖を疑わずことあるごとに下級民はおろか、上級民（王家の血を引かない）をも馬鹿にした言動をしている。そのためライトマイのクレタミソス3世とはまったく異なる意味で嫌われており、しかもそれは下級民からも同様である。この国で最重要視される能力、つまり魔術の才は優秀であり、実戦経験も豊富であるが、近年はそれに慢心して研究を疎かにしがちになっている。無論、ほかの者たちはわざわざそれを忠告したりなどせず、彼が自滅するならそれで良いと考えている。

やや赤みがかった肌は先祖の血によるもの。髪は派手なピンクに染めており、狂気じみた印象を与える。瞳は濁ったグレー。体格はそれなりに良く鍛えれば戦士としてもそれなりにはなるが、剣は下級民の持つものであるという王家や上級民の認識に従い、手にすることはない。

妃ミコンははとこに当たる女性である。血にこだわりを持つメレシウスは当初、いとこ（父王の弟ラザロスの娘）のリマイアに目を付けた。リマイアは容貌も良く王妃に相応しいと考えたのである。しかし、リマイアは30歳歳下である上に小さい頃からこの激しい性格の従兄を毛嫌いしており、父王やラザロスも味方しなかったことからとうとう実現しなかった。仕方なくもう少し対象を広げて考え、はとこで同い年のミコンを見つけたのである。既に王族を離れてはいたが、飲み込むしかなかった。この血のこだわりは、自らの母が上級民とはいえ大した魔術の使い手でもないことや、バシレウス王家の寿命が徐々に短くなっているという指摘から来る焦りでもある。第一子モンディウスは1,619年生まれである。

1,572.8.5生, 57歳(見掛け同じ). 身長167cm 体重61kg.

ライトネア第一師団将軍

ライトハイ国境に近いマカンドーの貴族（上級民）。1,622年から栄えあるライトネア第一師団を預かる歴戦の魔術師（ライトネアでは各国の第一師団だけが特別で、それ以外に序列はない）。しかし、これはどちらかと言えば最上級民の出でありながら、10歳から軍役に就いている彼に最後に与えられた栄誉職とでも言うべきであり、現実的に実力が伴っているわけではない。とくに防御に回ったときの打たれ弱さは周囲にも知られている。

上級民に多い赤みのある肌をしており、茶鼠色の短髪、柳色とでも言うべき瞳を持つ。強面もまた上級民に多い特徴である。彼の場合、上級民に必須の能力である魔力の大きさと魔術の行使という意味ではそれほど問題があるわけではない。ただ、大局的な考え方や柔軟な思考能力、相手を正しく評価しようという懐の深さに欠けている。彼の最後の戦いである1,615年のアケス・ネロの戦いにおいては、一連の戦闘でライトネアから出撃した将軍中、最大の損害をこうむっている（無論これは、相手となったファームズのフィア・ランセス男爵の陸戦における常識外れの戦闘力のせいもあるが）。1,614年に将軍となった翌年のことだった。

下級民を蔑視してはいるものの、これは上級民の半数以上に共通して見られる特性であり、ハドリアネスに限ったものではない。相手が上級民や王族であればいくらでもへりくだって接することもできる。とはいえ、自分の家の権勢をさらに拡大しようとするだけの能力には恵まれていなかった。

1,573.5.3生, 56歳(見掛け35歳). 身長160cm 体重60kg.

ライトネア王国潜水艦隊総大将

連合王国の海軍は、ライトネア王国のみに存在する。その総大将がメロクロスである。

アルジェロ東方のヤネイ出身。1,618年に任じられ、1,626年に死去した総大将グロワトスに代って総大将の地位に就いた。本来であれば彼より2年前から提督となっているサルドカトルが選ばれて然るべきであったが、シラカン8世はサルドカトルでも、その翌年任命のタレアスでもなくメロクロスを選んだ。1,623年のネアー海海戦では副将を務めた。上級民としてその能力に疑うところはない。

ただ、彼は将軍としての力量よりも、女好きの提督として有名である。それなりの見目を持った女性であれば、仔細は問わない。自身の見目は取り立てて良いほうではないのに、その独特の雰囲気と話術によって相手は正常な判断力を奪われ、気がつくと肩を抱かれたり臀部をなでられたりしており、加えてそれを嫌がりもしない状況になっている。上級民より下級民を好んでいる様に見えるが、これは要するに問題になる可能性がある相手よりも、楽に自由にできる方が良いという程度の話であり、状況が許せば上級民の女性にも手を伸ばしている。独身であるが子供は片手の指では足りないと言われる。

この噂は事実である。そのうちの一人に、ニヒタスという名の少年がいる。まだ10歳で、ほとんどの者はまだ注目していないが、潜在的な魔術の才、魔力の量は非常に大きなものがある。魔法学校校長ネレウスは、彼の潜在的な力と同時に、不穏なものを感じ取っている。それは彼の頭にある計画である。その計画とは、将来的にシラカン8世を倒して王権を奪うことを考えている。

1,434.8.12生, 195歳(見掛け同じ). 身長221cm 体重133kg.

リザードマンの大王

オージャス大陸最大勢力ブラッドクロウ部族を率いる大王。リザードマンは多くの湿地という湿地、沼地という沼地に大小の集落が存在するが、その中で最大のもの（表エルヴァート）はライトネア連合王国のシディス沼の中にある。そしてその部族をまとめるのが、大柄な肉体を持つ青年王（王の中の王）レガスである。オージャスのすべてのリザードマンを従えているというわけではないにせよ、集落の数は数千に上り、それはスメル大陸のそれを凌駕している。人間中心の世界にあってもその存在感は大きい。

表エルヴァートのリザードマンは一般的に身体が小さめ（といっても通常の人間と同程度）で細身であるが、支配階層に属する者たちは一様に身体が大きい。中でもレガスは、裏エルヴァートの大型種リザードマンに匹敵する体躯を持つ。生まれながらにして恵まれた体躯を持った彼は、同時に非常に高い知性をも併せ持っている。性格もそれに伴って一般的なリザードマンのように単に凶暴性が支配しているわけではなく、冷静で沈着な判断ができる。そのため人間など周囲の他種族との交渉事も避けることはない。これはリザードマンとしては極めて特異な存在であるが、地域の支配権を確立するのに時間は掛からなかった。

ただし、現在の巨大な支配をなし得たのは決して彼自身の力だけではない。そこからの躍進は、その特異性に目を付けた前連王シラカン7世が、彼と同盟を結んだことによる。すなわち、彼の持つ兵力から優秀な者をライトネアの五竜将軍およびその兵員として提供する代わりに、彼自身を含む男たちに五竜将軍のそれと同じライトネアの肉体強化魔術を施させたのである。これにより彼の軍団は戦闘力を飛躍的に向上させ、広大な版図（ただし沼や湿地）の平定を可能にした。擁するシャーマンの数も、他の部族とは比較にならない。数十〜数百マイル離れた集落とは、シャーマンの力によってつながっている。

スプリンググリーンの身体で前部はやや黄味がかっている。頭の両脇や口の下にある黒いトゲは、髭のようにもみえる。脚はやや短いが、彼の行動はむしろ俊敏であり、初対面の者が彼を侮りがちになるという役割も果たしている。幅広の剣あるいは大槍を好みつつ、弓を使うこともできる。金属鎧を身につけていることが多い。また首から骨をつないだ首飾りを提げている。