ジェトール王国は、1,380年にアルセン王国から独立し、1,613年にかけて存在した6王朝の王国である。最初の王朝はカッサリ。1,534年にクローヴィス・ハルドポリ（クローヴィス・ジェトール1世）が創始したハルドポリ王朝が、大国としては最後の王朝となった。テンプルナイツ（この地で信仰されるテレジーナ聖教の騎士団）リーダーだったクローヴィスが、アスクラ朝ヘシオドス5世に対して反乱を起こし、王を捕えて処刑、自ら王位に就いた。
ハルドポリ王朝は2代ヴェルギリウス、3代ブルータスと続き、1,613年にホーメルトの冒険者集団キングスパーティとの戦闘（正確にはフェルナンドが用いた超魔術兵器）で首都シャルルカが廃墟となり、王国としては瓦解した。このとき同時にテンプルナイツの大半が戦死した。強力な中央集権体制だったため、首都が機能を停止した後にまとまることはできなかった。1,630年現在、シャルルカ周辺に住む人間はいないが、モンスターや一部のヒューマノイドは徘徊しており、生命のない土地というわけではない。「旧ジェトール国群」は、滅亡後にそのジェトール王国が四分五裂した国々の総称である。
1,630年現在の最大勢力は、ニニムルを首都としたレアルド王国。旧王国では伯爵だったマデイラ・レアルドが、伯爵領をそのまま王国としたもの。元テンプルナイツであり、旧王国時代から縁のあったガリハック兄弟（オルソン、カイ）が従っている。彼らと続く2人は、シャルルカ崩壊で一度は戦死したが、蘇生している。
次が、大商人ルンガ・デバルを中心とした商人連合がヌーフの街で起こしたヌーフ連合。貴族と折り合いの悪かったアリューク・エッセンドルトおよびトリアート・アメルフィーグが付き、レアルドに匹敵する兵力（ただし傭兵）を擁して睨み合っている。
貴族からは、他にブルータスの従弟にあたるハリステレス伯爵が、領都レナポリスで即位して興したレナ王国がある。旧王国時代にレアルドと対立したことがあるフォーマル・クルーストリが従っており、勢力は及ばぬものの、存在感を保っている。
さらにたまたま外遊中だったブルータスの第三王子セネカがメルメの街で即位、旧王国の正統なる後継者を名乗り、パレスレステナト・ファミリアルを従えてかつての版図すべての支配権を主張している。しかし賛同者はあまり得られておらず、虚しい遠吠えである。彼の「正統」ジェトール王国は、レアルドとヌーフ、そしてレナの3国とそれらに与するほとんどの勢力から、丁重に無視されている（歯牙にも掛けられていない）のが実状である。
これらよりも小さな規模として、オーガの王国ブラゲル（支配者はザイドガ）、オークの王国ドングル（同、ボザス）がある。それぞれ人口は5,000程度でいくつかの集落に分かれて暮らしている。テンプルナイツによる1,611年のエルスルム攻撃時、この二勢力から1,000程度の兵が動員され、およそ半数が戦死している。ザイドガとボザスは旧王国でも一定の地位を与えられていた存在であり、人間社会の知識は十分保有している。現在のところレアルドやハリステレスらと同盟を結ぶつもりはなく、人間の真似をして独自に国を名乗り、時折周辺を略奪したりしているだけである。
これ以外にも国家を主張する者はおり、レアルド、ルンガまたはレナのいずれかの側に付いている。現状設定があるのはこの6国だけである。
いずれにしても、レアルド、ヌーフ、レナすら大国と呼べる存在ではなく、周辺のアルセンやライトネアなどからはほとんど相手にされていないのが実情。これまでのところ、セネカ以外にこうした小国をまとめ上げて王国を再興しようと考えている者はおらず、セネカの勢力もそれを実現できるほど大きくない。
上述6人以外のテンプルナイツはシャルルカ戦で死亡したか、首都におらずそのままか、雌伏しているか、既に王国時代を忘れているか、いずれかである。死亡した者たちはすべて埋葬されており、復活の兆しはない。