人物

1,582.3.24生, 47歳(見掛け同じ). 身長162cm 体重73kg.

国王

黒髪、細長い髭、吊り上がり気味の目と黒い瞳、やや土気色した肌、筋肉質で恰幅良い体格などは、祖先の故郷であるウイレヌとアリアノルに共通する特徴である。これは故郷たるウイレヌでも同様だが、純粋にボトフ「族」というのは王族とその血を受けた貴族や騎士たちのことで、この国の住民たちの中では少数である。つまり大多数を占める民は元々この地に住んでいた人々である。ウイレヌから渡ったのは王族と貴族、そして彼らの使用人や忠節を誓う騎士やその周囲の人々であり、これらは比較的純血を保ちながらも、徐々に周辺との混血も進んでいる。ウルデルの身体的特徴は祖先の血を色濃く示しているが、例えば彼の母親は宮廷に出入りする一般の民の出身である。三人の弟と四人の妹の母親はバラバラでウルデルに同腹の兄弟はいない。

個人戦闘を尊ぶアリアノル人の中にあって、彼は極めて珍しいことながら国外に目を向けることを重視する。戦士としての鍛錬を疎かにはしないが、それと同時に国外から多くの人物を自ら招聘して他国の状況や戦力について質問するなりしている。これまでは交易商人ばかりだったアリアノルの地には、いまや多くの外国人が訪れるようになっている。

ウルデルの兄弟、とくに三男カラジンと次女を生んだ夫人は貴族出身であり、第一夫人となったウルデルの母とは折り合いが悪く、そのいがみ合いは子どもたちにも及んでいる。ウルデルは鍛錬によって戦士としても弟たちより優秀ではあるが、国内の支持基盤は決して盤石なものではなく、争いの火種はそこここにある。これは何もウルデルの代だけの問題ではなく、父王マステルも祖父王コブレイの代もその前の代（初代モンケと二人の弟、コブレイの父は結局王になれなかった）同様であったし、ウルデルの息子たちも同様である。モンケが建国して88年、ウルデルが20人目の王であるという事実だけでも、それを物語っている。

ただし、ウルデルにはそれまでの王たちと異なる点がひとつあった。ウルデル自身というよりは、周辺の状況である。1,611年の先代チャパル即位から1,619年のウルデル即位に至る8年の間に、アリアノルを取り巻く環境は大きく変わった。大陸東側には大帝国ジアザー（現アマリス）が出現し、直接の影響は少ないながら南のホーメルト地方はフェルナンド帝国によって統一された。これは幼い頃から国外に興味を持っていたウルデルのみが持ち得る、焦燥感をもたらしていた。ウルデルは王族を説得して回った。これまでのように、王位継承権を争っている時代ではなくなったと。それは他の者たちにとっては多分にウルデルの我田引水という印象を与えはしたが、彼らが国外の脅威に無頓着であったことは確かであり、渋々新王の言を聞くようになった（前述のように、火種が消えているわけではない）。これにより、ウルデルはこれまでの最長在位期間を更新して10年間、玉座の主であり続けている。なお、ウルデルは即位時の年齢が歴代最高齢である。