地図はすべて24miles／hex。
エストア公国は、もともとラヴァンジ王国の貴族であり、半独立のまま80年が過ぎていた。ルーカス・フライホルツ公爵はこの状態について先祖以上に不満を持っており、北方の大国アイスラントの力を借りてラヴァンジを滅ぼすかあるいは弱体化させ、王国として完全に独立することを目論んだ。見返りは国内にある針葉樹林からの優先的な資源提供だった。ルーカスはわずかな供を連れてパニアに乗り込み、ヴィルヘルム・クルーザスと談判、自分の計画に乗ることを約束させた。ヴィルヘルムは、艦隊の上陸地点として首都エストアを指定した。
しかし、アイスラントはいざ上陸すると、真っ先にエストア城に兵を差し向けてルーカスを拘束、あっという間に処刑してしまった。それと同時に南方と西方へ派兵、ブランジ島の国々（北方連合）を次々に攻略した。魔術で強化されたアイスラント軍に、これらの小国はなすすべがなかった。ヴィルヘルムは上陸の障害を取り除けるというただ一点でルーカスの提案を受けたのであり、それがなくても遠からず北方連合を征服するつもりだった。ただ、エストアの裏切りにより時節が早まっただけだった。
ローディッヒおよびブランジの西側は、元々アイスラントの朝貢都市の集まりであったが、この大侵攻ですべてアイスラント軍に占領されることになった。
アイスラントはその後メラルド半島に侵攻してメラルド王国を下し、さらに西方、エルドレス神国に全軍を向けた。歴史ある大国だったエルドレスもまた、アイスラントの軍門に降ることになった。なお、この侵攻前にエルドレスの王女ヴァミリエはローラン王国に嫁しており、王族で唯一難を逃れた。
ヴィルヘルムの計画が狂ったのは、はるか遠方のスニルナに魔術師を派遣したことによる。同じくそこに来ていたラムサダス帝国の調査隊と衝突することになった。双方怪我人が出ただけで死者はなかったが、ヴィルヘルムはスニルナの住民を洗脳、ラムサダスに対して無視あるいは非服従の態度を取らせた。背後にアイスラントがいることを察知したラムサダスは、フェルナンド帝国のアーサー・フェルナンドやジアザー帝国のジアザー・テレビジョンと共にアイスラントに戦いを挑むことにした。ただしラムサダスはあくまで個人参加ということにして、数名の強化有翼魔法中隊とともにパニアへ乗り込むだけに留めた。戦いを決定づけたのはフェルナンド帝国の超魔術兵器ICBMである。パニア城は一瞬で灰燼と化し、ヴィルヘルム・クルーザスも妃や王子とともに横死した。
戦後、アイスラント周辺はフェルナンドが、エルドレス周辺はアマリスが引き継ぐことになった。また、彼らの前に現れた4人の魔術師たちはフェルナンドとラムサダスにそれぞれ迎えられた。彼らはそれぞれの支配者の暗殺を試みたが、まずフェルナンド側で計画が露見し、アーサーは彼らを罠に嵌めて謀殺した。この事態にラムサダス側も動きだし、ラムサダスの元にあった魔術師は2人とも国外脱出してアイスラントへ舞い戻った。現在、彼らはドライデラ山にある雪の女王…ヴィルヘルムの妹であるユイ・サンサーラ・クルーザスの城に、他の生き残りたちとともに立てこもり、復讐の策を練っている。
彼らは非常に危険な存在であり、アイスラント・ノブルランド交換条約でも懸念事項として上がったが、さし当たって刺激しなければ当面衝突はないと考えられている。万が一活動を開始した場合は、二国共同で（場合によってはラムサダス帝国を加えて発端となった戦争での三国で）対処する方針である。