概要

ランス半島西側にある、アドリル湾に面した小国。アドリル市のみで成り立つ。厚さ9m、高さ13mに及ぶ永久氷壁の中にあり、その入口は港と陸側の2箇所のみ。永久氷壁は魔法によって凍ったものであり、外気がどれだけ暑くても溶けだすことはない。

入口はそれぞれがオリハルコン製の扉で仕切られており、ウィッシュを除くいかなるモータル魔法でも開くことはない。攻撃魔法を重ねて破壊することは可能だが、リジェネレーション能力を持つ他に破壊された瞬間にコンティンジェンシーにより次の扉が出現する。氷壁と扉は、いずれもアドリル神によって作られたものとされている。

内部は常に15℃程度に保たれており、耕作地帯においては一年中農作が可能である。牧畜も行われており、また凍土由来の静水が市内を通って海へ注いでおり、川魚もいる。市内の一部では採掘も行われている。木材だけは外へ出ないと大量採取できないが、それを除けばほぼ完全な自給自足が行われている。アドリルにあるものは素材自体は何ら稀少ではないが、素朴な木彫りの人形や石細工、宝石細工などがこの地に出入りを許されているミラードの商人を通じて諸国で珍重されている。例えば遠い南方、ホーメルト地方の王ライゼル・フェルナンドの剣にある研磨されたルビーは、アドリルの職人に依るものである。またアドリルで採れる山羊の乳は、近隣で愛飲されている。

アドリルの人口は2,000ほどに保たれており、極端に増えることも減ることもない。外界との行き来も少ないので、住人の大半は10世代も遡れば親戚である。

1,630年の市長はエミリア・ハイゼンフィールド。1,618年に死去した夫ミニエルの後を継いで市長となった。あまり大きな共同体ではないため役職といえば村長と司祭くらいであり、兵員も志願制である。