人物

1,570.12.17生, 59歳(見掛け同じ). 身長175cm 体重73kg. (実体身長129cm 体重39kg.)

支配者（教皇）

頭頂部は剃り上げ、両側から後頭部に向け、白髪の混じり始めた鈍い色の短い赤髪がある。日中は常に金属鎧に身を包み、神の力を宿した木の剣と杖を持つ（ただし剣で戦うことはない）。グレーを基調としたローブにはケルマド教のシンボルである剣と盾のシルエットが、左右の胸に白く描かれている。これは彼が属するケルマド教の僧侶の典型的な姿である。その他下位の僧たちとの違いは、前面に剣のシルエットをあしらった高さ1フィードほどのグレーの帽子（教皇帽）である。

髪と同色の口髭を豊かに蓄えているが、顎は丁寧に剃っている。瞳はやや赤みも見えるクリーム色である。肌は年相応。

本名ヨッヘン・ヴィーラント・ローゼンタール。グレゴール市の司教の家に生まれる。彼はあまり父のノルベルトに似ておらず、その上ひどく低身長だった。弟にすらすぐに抜かされてしまい、幼少時はひどく悩んでいた。これは彼がノルベルトの子ではないことに由来する。彼の実父は人間ではなくハーフリングである。彼の母は、冒険を共にした種族の違う男の子供を宿したまま、家同士の取り決めによりノルベルトと結婚した。ノルベルト自身、ヨッヘンが自分の子でないことは承知している。ノルベルトはそれでも、少なくとも家ではヨッヘンを弟や妹と同等に扱っていた。

ヨッヘンは10歳の頃にふとしたことで自分の本当の父親のことを知った。そこでとある計画を立てた。双子神バトラスとウォーニスの説く戦いの教えにより見た目の力強さも重視されるケルマドにおいて、いつまでも子供のような彼は早々に出世コースから外されてしまっていたため、ある意味で自由であったこともプラスに働いた。

13歳で冒険を開始した彼は、半年ほどで「腕試し」などと言って山岳部に住む巨人のねぐらに一人で乗り込んだ。この巨人が、麓の小さな者たち（人間）と戦うことを好まないのを承知の上だった。彼は巨人と談判し、そして襲いかかって返り討ちにされた（ということにしてもらった）。予め自分と同じ程度の背丈の人骨を用意して、「家族が訪ねて来たらこれを渡してくれ」と言伝た。こうして、ヨッヘン・ヴィーラント・ローゼンタールという小さな僧侶は歴史から姿を消した。

ヨッヘンが次に向かったのは、東の岬に棲む魔術師の家である。ケルマド教において、魔術師はメイガスと呼ばれ、忌諱されるほどではないが敬して遠ざける存在であった。ヨッヘンの行動は教義に照らせば褒められたものではない。しかし、自身の今後に暗澹たる気持ちを抱いていた彼にとって、それは歯止めにならなかった。ヨッヘンは魔術師に一年間奉公する代わりに、自身を高身長に見せ掛ける魔法を掛けて欲しいと頼み、受け入れられた。このとき魔術師は人恋しくなっていたこともあり、世間から隔絶された存在であるヨッヘンはちょうど良い話し相手だった。ただ、魔術師は「自身を欺いて生きる者に幸福は訪れないと思うがな」とも言っていた。

ヨッヘン改めシュリンデールはこの日から天涯孤独の僧侶として活動を開始した。当初、彼の心には「見た目を重視する教会への復讐」という気持ちがあった。つまり、自分がトップに上り詰めた時点で正体を表し、他の僧侶たちをあざ笑うというシナリオである。しかし、彼の卓越した知見や神の技（実の父を知るまで、そしてその後も、彼は誰にも負けないくらい努力してきた）は、彼を計画通りには進ませなかった。親が僧ではない（と思われている）彼は位階の最下付近からの出発となったが、他の者たちとは知識・実力ともかけ離れていたためトントン拍子に出世の階段を駆け上がった。そして位階が上がるに連れ、人々の彼に対する評価もまたうなぎ登りになった。そして38歳で枢機卿の一人に抜擢され、40歳の教皇選挙で教皇となった。何れも教国史上最年少だった。そして、その後の19年間という在位期間もまた史上最長である。その多忙な日々の中、計画どおりトップとなったにもかかわらず、「復讐」を実行に移すだけの時間的余裕は彼には一度として与えられなかった。それどころか、彼の中には当初は存在しなかった信徒たちへの慈しみの心が育っており、彼らの敬虔で純粋な心にほだされたのか、彼自身神に誠実に仕えたいと考えるようになっていた。

教皇として過ごしてきたこの19年間、彼は一日として双子の神に懺悔しなかった日はない。嘘偽りを遠ざけるよう、日々信徒たちに説いている自分自身が、ずっと偽りの姿で彼らの前に現れていることへの懺悔を。大陸で急成長したアマリス帝国からの参加要請は、あるいは神から与えられた罰でもあるのかも知れないと考えている。

なお、彼の両親や兄弟は何れも混沌戦争あるいはアマリスの前身ジアザーとの戦闘で死亡しており、結婚もしていない現在では本当に天涯孤独である。