貨幣

フェルナンド帝国では、国家統一においての混乱を可能な限り避けるため、王国時代から貨幣体系の刷新は行わなかった。すでにそれまでホーメルトで標準的に使用されていたものを、帝国全土で統一しただけである。とはいえ、硬貨のサイズや重さは各国でまちまちだった。現在使用されている硬貨は、フェルナンド王国で使用されていたもの（フェルナンドだけでなく、セミルセシア等周辺の数カ国で用いられていた）のレリーフだけを変えたものである。

硬貨統一は、ホーメルト北島およびロングッドについては、帝国制施行時に発表され、金属の種類によって帝国標準硬貨へ1:1の交換が開始された。これは建前では強制だったものの、各人の持つ資産の確認は事実上不可能であり、元々の硬貨を少なからず所有し続ける者も多いし、それをいちいち帝国として確認もしない。商人たちも、経過措置の意味もあって旧貨幣による購入を許容している者が多い。すべては混乱なく移行するためである。

ホーメルト南島については1,617年に西半分を占領していたが、実際に交換がはじまったのは1,620年代に入ってからである。東半分も同時期にドバヌール王国による貨幣体系統一が開始されていたため東西の差は少ないものの、イヴァンやアイオリス、オウと言った旧大国の地では、まだ帝国標準硬貨の使用は少ない。

それでも、ホーメルト南島はまだホーメルト諸国の標準的な貨幣体系であったため、混乱は少なかった。ひるがえってシリアを含むセイレイ大陸の民にとっては、変更は大きなものとなった。金属ごとに交換レートが発表されているが、交換は始まったばかりであり遅々として進んでいない。多くの場所では旧シリア首長国の硬貨が使用されており、帝国の硬貨は稀である。