現在全域がフェルナンド帝国となっているホーメルト地方は、ほんの15年前までは多くの国が国境を接する地方だった。フェルナンドの超電撃的な領土拡大は、実戦本意の軍組織・軍人の精強さに加え、アマリス帝国の白色魔術団による超大規模魔術の支援なしにはとても成しえぬものだった。ただし、急激な変化には副作用がつきものである。その道理を越えた速度での領土拡大が、市井に暮らす人々を置いてけぼりにしたこともまた歴然とした事実。州区分の確立とあいまって主要都市については15年かけて帝国直轄の仕組みができあがったが、それ以外にはいまだに旧国家に所属していると思っている者も多いし、面の支配という意味ではまだまだこれからという状況にある。
旧国家群の支配者やそれに近い者たちには生存している者も多い。皇帝アーサーは刃向かう者は容赦なく叩き伏せたが、無抵抗で降伏した場合や戦が終結して後の流血を望まなかったためである。現在の州知事に旧支配者の血族はいない。ただし州において重要な実務をこなすようになった者はいる。とくに不安定な地域にあれば、国の再興を夢想することまでは止められぬにせよ、それが現実に可能であると考えるほどの楽天家は、少なくとも彼らの中にはほとんどいない。
現在一部なりとも旧国家群の形式を残しているのは、ロングッド島のヨーン自治区、テレジナスアートのドルドムラ管区程度である。なお、アルフの国であるグレイリー森林とマレイリー森林は、形式上先の2市と同様にフェルナンドの自治領となっているが、実質的には独立しており、フェルナンドによる地方統一前後で彼らの生活に変化はない。
地図はすべて24miles／hex。