現在のエルヴァートの歴史には存在していないが、フェルナンド帝国バレラス州の中央部付近に「カミザ国」という民主国家があった。現実世界のTRPG時代（1987～90年頃）のことで、紆余曲折を経て設定が排除されてフェルナンド王国に置き換えられた※1。TRPG時代に存在した設定は以下のとおり。
首都ロウトアー。民政党という政党の党首エール・ハミルトス委員長がその元首だった。1,607年まではティルス6世の治めるカミザ王国という専制君主の国だった。第一キングスパーティの一人として名を馳せたティルスは当初人気だったが、1,607年に大型間接税を導入しようとした際※2、民衆がこれに強く反発した。民衆の怒りを敏感に察知したハミルトスが民衆を扇動、各地で民衆の蜂起が発生した。ハミルトスらはロウトアー城を包囲してティルスに降伏勧告した。籠城から3日後、ティルスらは降伏したが、一家は処刑されることになった。この処置は第一キングスパーティでティルスの友人だったロングッド国王メルメトン2世の取りなしにより、すんでのところで回避され、ティルス一家は国家のかつての首都カミザの街で、平民として存続を許されることになった。
無カミザ時空におけるティルス一家は以下のとおりである。
| ティルス6世（ティルス・デクレア・コミット・カミザ) | シーナ・カミザ | ドルトン・デクレア・モリアス・カミザ | カンサス・カミザ | キャサリン・＜月光草＞・カミザ | レサヴァン |
|---|---|---|---|---|---|
| 国王 | 王妃 | 第一王子 | 第二王子 | 王女 | 専属魔術師 |
| 戦士 | 魔術師 | 戦士 | 戦士 | 戦士⇒僧侶 | 魔術師 |
無カミザ時空において、リチャード・アーサーの親子はロングッド王国ザモラ候とその息子だった。アーサーが妃探しを始め、部下のクラウドに依頼したとき、旧王国の王女だったキャサリンもその候補に上がった。最初はアーサーが彼女の庭を突然訪れたため、キャサリンは青竜をけしかけて追い返したことがあった※3。アーサーは指輪から飛行魔法を発動して逃げた。その途中、ジアザー率いる白色魔術団に助けられた。改めて正式に訪問し、ティルスの許しを得て交際を開始してから、二人で別のドラゴンに襲われたことがあった。アーサーはキャサリンとともにクリーム山脈に住むドワーフ氏族の王子ダンギスの元に身を隠した。その後アーサーが（現在の皇后である）エリカと出会い、キャサリンを妃候補から外すと、キャサリンは「尼になります」と言ってエルメラン教会に入り、一生を教会で過ごすことにした※4。
ロミナという女魔術師がアーサーと戦い、アーサーが彼女を説得して結婚することになったが、婚礼直前にロミナの父が現れてロミナとディスインテグレートを撃ち合って相殺、アーサーの記憶をセイリアン・ダルスが消すということもあった。このロミナの父は、その前にクラウド・ファルマスの初恋の相手エリナーを殺していた。
第二キングスパーティが永世王国の危機を救った際、「自分の力が及ぶ範囲で願いを叶える」という半神ヴェダイとヴィドワに「フェルナンド王国が欲しい」と願った。その願いは叶えられ、アーサーらはその時空から現在のエルヴァートの時空に移った。王国はカミザ国とその周辺に建てられ、元の時空では侯爵だったアーサーの父リチャード・フェルナンドがその国王に据えられた。代わりにティルスはカミザ侯爵になった。元々フェルナンドの領地だったザモラ・キンメリア周辺は、キンメリア市長だったオスカー・ジョースリットに侯爵という地位を追加してその領地とした。
他に例えばルヴァル王国という国もあったが、これも現在の時空ではフェルナンド王国に組み込まれ、アーサー・レキシントン男爵という設定もそのままフェルナンド王国の男爵となった。セーラン王国国王オーリック・デイヴィスもセーランの男爵となった。
元の時空の歴史を知っていたアーサーは、革命の首班となるハミルトス委員長を危険視し、ロウトアーに「帰還」するとすぐさま国家反逆罪の疑いにより彼を逮捕、死罪を申し渡した。弁明の余地を与えぬ恐るべきものだった。同時に他の政党もすべて解散させた※5。続けてアーサーは、クリーム山脈にダンギスの元を訪れて礼を言っている。もちろん、現在の時空のダンギスはアーサーのことなど知らなかったため、一方的に感謝の言葉を口にするアーサーに対して終始きょとんとしていた。
ロミナについてはキンメリアで存命。父親の行動は元の時空と同様だが、エリナーの殺害場所はフェルナンド家の設定変更に応じる形でキンメリアからロウトアーに移している。その後父親はアーサーとクラウドにより倒された※6。
ティルスらの家族関係や性格などの設定は、基本的には現在の時空でも同一である（2023年、ドルトンと合わせるようにカンサスにデクレア・メイソンというミドルネームを付与した程度）。しかし、ティルス一家は全員その後の1,614年の混沌戦争で死亡している。このためアーサーによる翌年の王国復活時点で、カミザは主のいない街となっていた。レサヴァンについては国王付きとなった歴史が消えたため、単に在野の（名の知られていない）1魔術師であり、同じく混沌戦争時に死亡している。
※1 厳密には、現在の歴史でもカミザ王国は存在しており、1,102年にフェルナンド王国によって滅ぼされている。「無カミザ」ではこの勢力争いが逆に振れ、フェルナンドが敗亡してロングッドへ落ち延びた。1,353年にロングッドで伯爵号を得る。
※2 現実世界で1989年に消費税導入を巡る混乱が起ったことを受け、革命の理由として後付けした。
※3 キャサリンのペットだったかどうかは未設定。
※4 「めぞん一刻」（高橋留美子）の登場人物、九条明日菜のパロティだった。
※5 アーサー（プレイヤー）はこのとき「余の国に政党は要らぬ」などと発言。ただし、この変換は1,611年で元の時空の革命は1,607年なので、過剰反応だった感もある。
※6 ロミナにはヴァルターという姓があり、侯爵息リーアム・ジョースリットの妻となっている。父の名はディーター。このあたりはすべて2021年〜2022年に旧設定の拾い直しをした際の後付け。
プレイ当時は単純な歴史改編を考えていた。これらの物語をプレイしているとき、まだ設定はホーメルト周辺のみだった。世界としてあまり形になっていなかったし、イモータルが「絶対的な力を持つ存在」程度の認識だったため、上記のような歴史の転換も不可能ごとだと思わなかった。しかし、後々イモータルの実状や多元宇宙のありようを知るにつけ、周辺に与える影響、膨大な歴史への干渉は半神はおろかイモータルであるメロスにさえも不可能だという結論に至った。
解釈としては、時間の領域の力で過去に干渉し、本来カミザ側だった2カ国の勢力争いをフェルナンド側に傾かせた、という方針に落ち着く。特定の時点でマルス星をコピーし、その後慎重に細工を施して元の歴史と微妙に異なる歴史を歩ませた。結果できあがった「カミザが滅んだ世界」に、アーサー・フェルナンドという個体を移動させた。