デスヴァレーはホーメルト北島中央、「地獄の谷」と呼ばれる巨大な裂け目の底部に存在する都市国家である。「デスヴァレー」は街とその周辺を示す対外的な名前であり、街そのものは古くからナイトサイトと呼ばれている。南島のファーランド、セイレイ大陸のレッドシティを合わせ、3つの魔術師の都、「3魔都」と称される。
魔術師は自分の性格に適合する街を選ぶ傾向にある。法を志向するものはファーランドに、中立はレッドシティに、そして混沌はナイトサイトに。ただしこれは一般的な傾向であり、より本質的にはそれぞれの研究対象、興味の対象によって選ぶ。協調か個かと考えても良い。1,608年から市長を務めるダーム・ルートヴィヒスバーグも、個を志向しているだけでまったく邪悪な存在ではない。多くの個を志向する者、悪を志向する者の中にあって、例外的に他者との交渉や調整を苦にしない性格のため、代表を務めている。純粋に魔力の面でいけば、街にいるおよそ300の魔術師の中で上の中というところである。
ナイトサイトにある都市機能はごく基本的なものだけである。衣装や武器は、ほとんどの場合街の外で仕入れる。食糧や酒、水を提供している者はいるものの、これらも基本的には自給自足である。書籍や魔法の物品などに関しては魔術師同士の取引が成り立つ。
「地獄の谷」には、多くの邪悪なモンスターが徘徊している。ナイトサイトの魔術師の中にはこうしたモンスターを研究対象としている者もいる。街の周囲1kmほどは強力な結界が存在しており、こうしたモンスターのほとんどを寄せ付けないようにしている。一部の強力すぎるモンスターには影響を与えないが、逆にそうしたモンスターが街に興味を抱くことは少ない。