概要

ロンバス王国は、トーンダス半島の付け根、グレダス湖のほとりにある小さな王国である。現在国王レノックスは、国の顧問で王女ネアラの夫となったイッポリトという魔術師によって魔法をかけられ、夢と現実がつかない状態になっている。実質的に国を仕切っているのはイッポリトである。

ホーストヘルンの小アルケイナの一人だった魔術師イッポリトは、あることを切っ掛けに大アルケイナのいない日常を考えるようになった。それは通常ワールドオブタローで生まれた人間が持ち得ぬ感情であった。彼は自分の死を偽装することでワールドオブタローを脱出した。

イッポリトは南方の小国ロンバスに目を付けた。王女ネアラを一目見るなり気に入ったからである。そこでイッポリトはネアラを妻として新たな生を始めようと考えた。まずはネアラの父で貪欲だが満たされていなかった国王レノックスに、話を持ちかけた。私は巨大な赤竜を5体使役できる。これを使って周辺に領土拡大ができるだろう。代わりにネアラが欲しいと。

レノックスは当初拒絶したが、言葉巧みに言い含められ、最終的には自らの欲に負けてこれを受諾した。寝耳に水だったネアラもまたこれを拒絶したが、イッポリトは彼女を魔法で縛り、操り人形にした。ネアラは自らの意思を離れた身体の中で、屈辱に耐えながら救いの日を待つことになった。

自分の町で手一杯だったレノックスは、半年のうちに半径72マイル程度にある町や村を焼き払い、すべて自らの領土とした。そこで満足すれば、彼は領地を大きく拡大した中興の祖として歴史に名を残したかも知れない。しかし、レノックスは自らのものとなった大地の広さに目がくらんだ。征服した街から連れてきた娘たちにも心奪われた。彼はイッポリトに第二王女ミションまでも与えると、さらなる征服を求めた。

イッポリトは好色なわけでもなく、ネアラ以外の女性、それも10歳の少女を欲しいとは思わなかった。イッポリトは、レノックスの貪欲さを危険視するようになっていた。さらに手を広げることは可能だった。しかし、それは同時に大国の耳目を集めることにもなる。ザードラはまだしも、母国ホーストヘルンの目を引いたが最後、自分程度の魔術師はあっさりと滅ぼされてしまうことだろう。

イッポリトはレノックスに強力な幻覚魔法をかけた。レノックスが自分の望んだとおりのものを見て、聞いている気になれるように。果たして、レノックスは夢と現実を行き来するようになり、国はそれまでにも増してイッポリトの支配するところとなった。

なお、イッポリトは知らなかった。大アルケイナの＜愚者＞ら数人は、彼の死が偽装であると気づきつつ何もしなかったことを。