刻のアルフ

彼らがいつからそこにいるのか、モータルには知られていない。彼ら自身ですらそれを忘れているようである。ホーストヘルンの学者には、彼らが未来からの時間旅行者であると主張する者もある。即ち、ある時点における大いなる厄災を回避するために、未来のシヴィルスクアルフが時間を遡行する魔術を編み出し、過去に来たのだと。

手違いで元の時代へ帰れなくなったか、最初から帰ることのできない旅だったか、まだその時が訪れていないだけなのかは、学者の中でも議論の分かれるところである。

学者たちは、ファリサル・シェリオス・ミ・アデルが彼らの王であることを知っているものの、いつからそこにいるのか、いつ即位したのかには答えられない。

碧の騎士エディアールの事件解決のためにニアラシェール・イ・カイルハラスが1,000年の時を経て姿を現したことで、彼らが少なくとも1,000年以上の長命であることが確認された。

彼らの存在が知られていないのは、ニアラシェールがカレンティシアスの歴代国王に施しているのと同じ刻の魔術を、種族の長老たちが周囲の人間たちに施した結果である。ファリサルは315歳であり、即位からまだ101年しか経ていない。にも関わらず、記録がなく、記憶も追えないのである。

ただし、イモータルである永世王国のメロスだけはこの事実を把握している。また過去のカレンティシアス王国の危機に際して、セイリアン・ダルス他数人に15色の騎士やニアラシェールとの共闘を命じたことがある。

刻の魔術は生来のものではなく、彼らは本質的には他のアルフと同様の存在である。メイジとして究極の域に達した者だけが、試練の後に賢人会議（長老連もこれに含まれる）に加わる資格と、そこで共有されるこの魔術を会得する資格を得る。ファリサル王は前王の長子だが成長が遅く、その域に達するにはまだ時間がかかる。