1,630年1月3日。エルヴァートの各地で突然魔法の行使が不可能となり、正しい呪文を詠唱しているにもかかわらず何の効果も現れなくなった。同時に大半の魔法の物品が何の効果も発揮しなくなった。ルーン文字で描かれたものはほぼすべて消滅した。ハイメタル、そしてフィル合金のような、その素材自体が魔法であるものは本体を含めて完全に破壊された。このため世界中で大混乱となった。これは、地上の行きすぎた魔術に関しての処置として五大イモータルが決定したものである。詠唱は翌4日には可能となったが、魔力の失われた魔法の物品はそのままになった。ただし、現物が失われたとは言えその知識まで失われたわけではない。例えば羊皮紙や書籍に記された文字であっても通常用いられているものであれば破壊を免れている。このため、製法が失われていなければ物品の再構築自体は可能であった。
この破壊的な変化を免れたものはいくつかある。まず、アーティファクトは一切影響を受けていない。これはイモータルによる決定がモータル級魔法に限定したものだったからである。また、地下6m以下、水深1.6km以下、上空320km以上、そしてアーティファクトに包まれた空間内も、同様に影響を受けていない。これらに当てはまらないものの破壊を免れた代表が、裏エルヴァートの世界楯山脈上空200'ほどに浮かぶ中空の都市ランリュートである。周囲を護る滝を含めて一切影響を受けていない。他にもいくつか、意図的に影響を受けなかったり、弱い影響のみ受けたり、あるいは翌日には力が復活したりしたものがある。
以下に代表的な大規模魔術物品への影響を列挙する。
コンピュータ…駆動系が破壊。記憶媒体は物理法則に基づくものであったため破壊を免れている。アマリス帝国の技術者窈湖の元に送られ、半年を掛けて3台共修復されている。その際部品の半分が非魔法に置き換えられ、性能劣化と引き換えにオリジナルにあった魔法による誤作動・動作不全の可能性が大きく低減された。窈湖は引き続き、非魔法と性能の両立を課題として研究している（例えば通常は魔法を主駆動源とし、なんらかの影響を検知した瞬間自動的に非魔法に切り替わるような）。ラムサダス帝国製のものは製造途中だったため、部品の半分は使用不能となったが製造が後退しただけで済んだ。
フレームランチャー…ハイメタル製のため一本を除いて完全破壊。一本は時間の領域のアーティファクトである保管庫に配置されていたため免れている。
シルヴィア・タランティスのロンゲヴィティ生成機…地表面に現れていなかっため影響なし。
戦艦、空母、戦闘機…機体そのものがハイメタルあるいはフィル合金のものは全破壊。それ以外は推進機関や空調、強化装甲、接合、武装等、魔法物品のみ破壊。旅客機も各国で影響を受け、半年が経過した現時点でも就航はイモータルの破砕が行われた1月3日午前0時以前の3割程度。フェルナンドを含む数カ国の旅客機、航空機が該当時間飛行中であり、世界で385名が命を落としている。
アーサー・フェルナンドのダブルプロテクションブランケット…破壊。ジアザーの遺したレシピを元にケイト・ホルディングが再作成。
バレラスサット…上空200マイル程度に位置していたため影響なし。ただし地上通信施設はすべての機能を喪失したため、その復旧が完了するまでの半年間、地上からその安否は不明だった。
ドバヌールの剣…機能停止。後にフェルナンド軍により再度魔力付与される。